従業員の体調が生産性に影響する
プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムとは
企業経営において利益向上に直結する重要な指標の一つが、労働生産性です。毎日始業時間に従業員が出社し、所定労働時間通りに仕事をする職場の生産性が必ずしも高いとは限りません。一見、従業員が一生懸命働いているように見えても、そこには生産性を下げる要因が存在していることもあります。その一つは、従業員の心身両面の健康問題です。WHO(世界保健機関)は健康問題に起因した従業員のパフォーマンスの損失を表す指標として、「プレゼンティーイズム」と「アブセンティーイズム」を提唱しています(本連載vol.1参照)。それぞれ見ていきましょう。
プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムは、下記のような状態をいいます。これは従業員が健康で働ける状態から、出社できない状態に至るまでの段階とみることもできます。
例えば、アブセンティーイズム(欠勤)の従業員が増えると、職場は人員不足により生産性が下がるでしょう。それに対して、プレゼンティーイズム(出社)では職場に従業員がいるため一見問題がないように見えますが、心身の不調で能力を最大限発揮することができなければ、生産性は低下していきます。
アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムには、体と心、両方の側面があります。例えば、運動不足やバランスの偏った食生活、過重労働による疲労など、体の健康を害する要素が常態化した職場環境では、日本人の三大疾病である、がん・心臓病・脳卒中などによるアブセンティーイズムのリスクが高まるでしょう。
また、人間関係によるストレスや、発達障害をはじめとする特性に対する周囲の理解不足などで心理的な健康を損なう職場では、メンタルヘルスの不調によるプレゼンティーイズムを経て、より深刻な事態に発展する恐れもあります。そして、いくら業績を上げるためとはいえ、過度なプレッシャーや過剰な仕事量、長時間労働の常態化は、脳・心臓疾患やうつ病など、従業員の心身双方に深刻な影響を与える可能性があります。