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ブランドの未来を守れ!
模倣品・海賊版対策の今。

鉱物などの物的資源が乏しい日本にとって、
創作物やアイデアは重要な経済的資源。
これらの知的財産の価値を、大きく損なってしまうのが
「模倣品」や「海賊版」です。
今回は、ブランドの脅威となる模倣品や海賊版の
日本における現状や対策などについて見ていきます。

模倣品・海賊版はネット取引被害が特に問題に

日本は、2004年に企業などからの要望を受けて経済産業省に「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」(以下政府総合窓口)を設置。2005年からは、外国で日本企業の知的財産(以下知財)権が適切に保護されていない場合、必要に応じて2国の政府間協議や多国間で締結された協定などを活用することで問題の解決を図る「知的財産権の海外における侵害状況調査制度」の運用が始まりました。こうした取り組みが奏功し、近年の模倣品・海賊版の状況は一部改善しています。しかし、いまだに中国をはじめとして世界中で、模倣品・海賊版による被害は発生しています。
政府総合窓口に寄せられる相談や情報提供等を合わせた受付件数は、2012年の1855件をピークに、2016年は898件まで減少しました。その一方で、相談件数だけを見た場合、2010年から毎年増加し続けており、2016年には過去最高の348件になっています。特に現在大きな問題になっているのがインターネット取り引きでの被害。インターネット上では、商品画像などを複製して模倣品を簡単に正規品に見せかけることができるため、販売業者にとってECサイトが格好の販路になっています。2016年に受け付けた898件のうち、インターネット取り引きに関する相談・情報提供が572件で、全体の約64%にも及んでいます。

政府総合窓口への受付件数の推移

出典:経済産業省及び関係省庁「模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告(2017年版)」

国・地域別の相談件数については、2004~2016年に受け付けた計1897件の相談案件のうち、模倣品の製造国・地域が判明しているものは644件。その中で、中国(香港を含む)に関するものが全体の6割以上を占めています。次に日本国内に関する相談が多く、台湾、韓国が続きます。
また、商品分野別では、1897件の中で対象になる商品種別を明らかにした相談が1248件あり、「雑貨」が40.5%と最も多くなっています。続いて「電子・電気機器」が19.0%、「繊維」が9.1%、「一般機械・産業機械」が7.0%でした。
模倣品は、多大な努力によって生み出された知財に、無関係の第三者が“ただ乗り”して利益を得ようとするもの。これを放置すれば、知財の創造意欲を減退させることになり、経済社会の発展にも大きな害になるといっても過言ではありません。

模倣品の製造国・地域が判明している相談案件の割合(2004~2016年の累計)

出典:経済産業省及び関係省庁「模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告(2017年版)」

商品分野別の相談案件の割合(2004~2016年の累計)

出典:経済産業省及び関係省庁「模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告(2017年版)」

模倣品・海賊版による被害の実態は?

模倣品は、正規品と異なり低品質の部品で構成され、部品の欠落や設計上の欠陥が多く見られます。また、電子機器では絶縁体の不備といったケースもあり、必要な安全基準を満たしていません。安全試験機関が行った試験・分析によると、大手スマートフォンメーカーが発売する電源アダプタの模倣品は、通常の使用でもオーバーヒートによって発火し、使用者に電気ショックを与える可能性があるとしています。
また、マレーシアでは、日本の映像作品の海賊版DVDに、正規版を示すホログラムシールが貼られていたという事例がありました。日本政府は、日本動画協会(AJA)と日本映像ソフト協会(JVA)からの著作権侵害の申し立てに基づいて、2011年にマレーシア政府の制度・運用の実態と被害状況に関する調査を開始。その結果、マレーシアにおける制度の運用に問題があると判断し、2012~2014年にかけてマレーシア政府と計4回にわたる協議を行っています。これを受けてマレーシア政府は、ホログラムシールの許可情報をインターネット上で公開するように制度を改善。権利者が不正な許可情報を確認した場合は、刑事告発することも可能になりました。

巧妙に悪質化。使用者の安全も脅かす模倣問題

最近は、単純に他者の商標を模倣して製品に付けるという、知財権の侵害が容易に分かるものとは異なり、複雑な模倣問題も起こっています。液晶テレビで実際にあった事例では、外見には何も商標を付けず問題がないように思わせておきながら、電源を入れると画面上に有名メーカーのブランドロゴが表示されるというものがありました。悪質なものになると、画面にどのブランドロゴを表示するか選択できるタイプも見つかっています。
同様に深刻な模倣問題の一つに挙げられるのが、自動車用の偽造エアバッグです。膨張する力が弱かったり、膨張する際に部品が飛び散って人を傷つけたりするものがあり、安全基準を満たしていないどころか、重大な危険性をはらんでいます。
さらに、外見だけを正規品に似せて製造し、商標だけを付けない、または販売直前まで商標を付けないといったものもあります。商標が付いていれば商標法で対応することができますが、付いていない場合は商標権侵害で取り締まることができないため、対応を難しくしています。

政府は模倣品・海賊版対策を知財権侵害問題で最重要視

これらの知財権侵害に対して日本政府は、2013年に新しい知財政策の長期政策課題等を盛り込んだ「知的財産政策ビジョン」を策定。同ビジョンは、国内外での知財保護にかかわる最も重要な施策の一つに、模倣品・海賊版対策を掲げました。また、同ビジョンに基づいて策定した「知的財産推進計画2016」では、正規版コンテンツの流通拡大と一体になった模倣品・海賊版対策、国内での侵害対策と啓発活動の着実な実施、通商関連協定などを活用した知財保護と執行強化など、デジタルネットワーク時代の知財侵害対策についても施策を打ち出しています。
知財は、日本が世界をリードできる貴重な経済的資源。その重要性は、今後より一層高まっていくはずです。横行する知財権侵害に対して、日本政府はグローバルでの制度整備と法執行の強化を促していく必要があります。一方、企業をはじめとする権利者の側でも、正規品を守るために偽造防止の仕組み作りを進めるなど、政府と歯車の両輪になって模倣品・海賊版に対処していくことが、日本の未来を守ることにつながるのです。

「模倣品・海賊版対策を支援する富士フイルムの製品・技術」

  1. デジタルデータ送受信・共有クラウドサービス
    模倣品・海賊版はデータの流出から。富士フイルムでは簡単・確実・安全に、デジタルデータ・ファイルを送受信・共有できるクラウドサービスを用意。海外の取引先とも安心してご利用いただけます。
    クラウド型 ファイル管理・共有サービス「IMAGE WORKS(イメージワークス)」
    クラウド型 ファイル送受信サービス「SECURE DELIVER(セキュアデリバー)」
  2. コピープロテクト
    カスタマイズサポートも万全の、CD/DVDの複製・コピーを防止するサービスの他、セキュリティ機能を付与した光ディスクを社内で製作するためのソフトウエアのご提供も。
    コピープロテクト

記事公開:2018年8月
情報は公開時点のものです