人のやる気を引き出すために必要な3つの“話の機能”
仕事を進める中で必ずといっていいほど発生するのが、部下や同僚、協力会社などへ依頼をする機会です。大きな仕事ほど、より多くの人に依頼をすることになるでしょう。そして依頼の際、こちらの頼み方次第で相手のモチベーションは大きく変わります。人が何かをするときに、モチベーションはとても大切な要素のひとつ。相手が自らやる気になってくれるかどうかは、その仕事を成功に導く第一歩になるといっても過言ではないでしょう。そこで今回は、相手のやる気を引き出すために、日頃から意識しておきたい話し方について解説します。
前回の「vol.3 話の要点が伝わらない理由と、緊張でうまく話せない要因とは?」でも説明したように、話には様々な機能があります。このうち、相手のモチベーションを高めるために使う「話の機能」は、「称賛」「説得」「共感」。この3つの機能を、相手の性格や状況に応じて使い分けることで、相手のやる気を引き出すのです。
褒め方にはルールがある
「称賛」は、まさしく相手を“褒める”ことです。褒められるのが嫌い、という人はいないでしょう。ただし、褒め方にもルールがあります。そのルールに則っていないと、自分は褒めたつもりでも相手には伝わらなかったり、逆に相手の気分を害したりしてしまうこともあります。
人を褒めるときの大前提は、「相手が基準」ということです。相手が今までできなかったことができるようになったときが褒めるタイミング。たとえそれが、自分にとっては既にできることであったとしても、です。自分を基準にしてしまうと「こんなことできて当たり前だ」と思ってしまいがちですが、相手が成長したことは間違いありません。それを率直に評価してあげれば、相手は更に成長しようという気持ちになるはずです。特に、以前注意した内容が改善されたときは、必ず褒めるようにしましょう。注意されてばかりでは、人はやる気を失いかねません。注意は、称賛とセットで行うものだと認識してください。
また、褒める内容は「仕事が早くなった」「成績が良くなった」など、具体的事実に基づいている必要があります。これがないと、褒めるのではなくおだてることになってしまいます。ときにはおだてることがあっても良いかもしれませんが、おだててばかりでは単に調子の良い人と思われかねません。そうなると、事実に基づいて褒めたときの効果も下がってしまうので注意しましょう。オーバーな表現もNGです。
相手を褒める時のタイミングも大切です。相手が成長したと感じたら、そのときに褒めるようにしましょう。時間がたってから褒めても、「何を今更……」と思われ、相手には響きません。日頃から相手をよく観察して、相手が気づいていない点を褒めたり、第三者を介して間接的に褒めたりすると、よりやる気を高めることができます。適切な内容を、適切なタイミングで褒められるように、褒めるための表現をたくさん蓄えておくと良いでしょう。
相手に響くキーワードを把握しておく
「説得」では、「具体的な方法やプロセス、結果を示す」「プライドをくすぐる」「ライバルを意識させる」「不安感をあおる」「締め切りを迫る」など様々な方法を駆使して、相手のやる気を引き出します。どの方法が最も響くかは、人によって異なります。日頃から相手をよく観察して、どういった言葉、内容を伝えるとスイッチが入るのかを、把握しておきましょう。伝えるものを間違えると、かえって相手のやる気を損なってしまうことがあるので注意が必要です。
説得するときは、相手が自分をどう思っているかも重要です。相手からの尊敬や信頼、好意などがなければ、どんな言葉を使ってもモチベーションを上げることは難しくなります。単に仲良くしておけば良いということではなく、相手との立場の違いなどを考慮しながら良好な人間関係を築いておきましょう。その上で、相手の性格や説得するときの状況などに応じて言葉を選ぶことが、相手のやる気を効果的に引き出すことにつながります。
モチベーションを向上させる3つの話の機能
知と情のバランスがやる気を高める
「共感」は、称賛と説得の効果を補強するものです。たとえば「色々と仕事が重なって大変だと思うけど~」といった、相手の立場や状況に寄り添った言葉をかけるだけでも、相手のモチベーションは高まります。
これまで挙げてきた称賛、説得、共感という話の機能は、独立したものではなく、お互いに重なり合う部分を持っています。ですから称賛しながら説得したり、共感しながら称賛したりすることによって、より気持ちのこもった言葉として相手に伝わるはずです。
話には、「理解させること」と「心に響かせること」の2つの効果があります。この2つのバランスをとることで、相手のやる気を引き出すことができるのです。どちらに比重を置くかは、相手によって異なります。そのためにも日頃から相手をよく観察し、相手の心に響く表現を身に付けておくことが大切です。相手の個性に応じて、心のこもった称賛、説得、共感という話の機能を使うことができれば、きっと相手に気持ち良く仕事をしてもらえるでしょう。