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日々を充実させる!タイムマネジメントの技術

24時間を上手に使って、仕事もプライベートも充実させるコツを紹介します。
vol.15

自分でコントロールできる?
究極の集中「フロー状態」に入るコツ。

時間を忘れて没頭する 「フロー状態」とは?

日々の業務の中では、さまざまなタスクが発生します。しっかりこなそうとするほど、「やらなければ」と焦り、「うまくいかないかもしれない」という不安に陥るかもしれません。焦りや不安といったマイナス思考を排除できれば、よりタスクに集中でき、限られた時間を有意義に使えるのではないでしょうか。

そこで今回お伝えしたいのが、集中力の最高到達点ともいえる「フロー状態」です。時間を忘れ、ひたすら目の前のことだけにのめり込むことを指します。これはハンガリーの心理学者ミハイ・チクセントミハイ氏が提唱した言葉で、没頭しているときの感覚がまるで「川の流れに乗っている感覚」に似ていることから、水の流れ・フロー(flow)と表現したのです。

アメリカのジャーナリスト、スティーブン・コトラー氏と、パフォーマンス専門家のジェイミー・ウィール氏が行った研究によると、フロー状態になると「集中力が極限まで高まり、ほかの物事への意識が消え失せる」「心身両方のパフォーマンスが限界を超えて高まっていく」そうです。また、人間らしい思考や判断、記憶、感情を司る脳の前頭前野の働きが抑えられるといいます。その結果、集中を阻害するマイナス思考や不安感が起こりにくくなるのです。

フロー状態が生まれるカギは、「チャレンジ」と「スキル」

チクセントミハイ氏は2004年、アメリカの講演番組に出演し、フロー状態には以下のような特徴があるとまとめました。

  • 作業に入り込み、集中していること
  • 自意識が消失し、非日常的な恍惚感が得られること
  • 目標が明確になっていること
  • 目標を達成する方法を知っていること
  • 落ち着いた精神状態であること
  • 時間感覚が喪失していること
  • その作業に内発的動機があること

そのようなフロー状態に入るために必要なのは、まずタスクに手を付けること。「ついタスクを後回しにしてしまう……」という方は、本連載第11回なども参考に、先延ばし対策をしてみてください。やる気が起きなくても、パソコンを起動する、資料を開く、などの些細な行動でもよいので、とにかく一歩目を踏み出しましょう。

またチクセントミハイ氏は、「チャレンジ」の難度と必要な「スキル」の高さがフロー状態に入るカギになるとしています。

■ フロー理論

上記のように「チャレンジ」と「スキル」のレベル感がいずれも高いときを、フロー状態に入りやすい条件として挙げました。つまり、「多少困難と思えることにチャレンジしている」とき、かつ「自分にとって高度なスキルを使う」ときにフロー状態に入りやすいのです。

ただし、これは自分がしたいこと、好きなことに取り組んでいるときの話です。ジムで運動していたり、ゲームでクリアを目指していたりすると、自然と集中することができますよね。もし仕事が「好きなこと」であればいいのですが、そうではない場合もあるでしょう。そこで、仕事のタスクにおいても、このフロー状態に入りやすくなるコツを、最後にご紹介します。

仕事でフロー状態に入る、4つのコツ

趣味を楽しむように、仕事に没頭できると作業は大幅にはかどるでしょう。実はそんなに難しいことではなく、普段のタスクの中で、ちょっと思考を変えればできるのです。その実現のために、4つのコツが必要です。

1. 直近の達成できそうなゴールを明確に
タスク単位、週単位など長期ではなく、まずは今日1日のゴールを決めましょう。取り組む前に、しっかり目標を見返すこと。やるべき課題を洗い出し、意識することでモチベーションは上がります。「この案件の提案書まで書き終える」「資料を完成させる」など具体的に。「6時には退社する」といった目標も、集中力を高めてくれるでしょう。
2. 自分の仕事の意義を考える
自分がやっていることの価値がわからないままだと、集中することは難しいかもしれません。「誰かの、何かの役に立つ」など、取り組んでいることに意味を見出せると、フロー状態に入りやすくなります。もし、普段は仕事の意義を意識していないのであれば、この機会に一度しっかりと考えてみてもいいかもしれません。
3. 現状に甘んずることなく挑戦する
日々仕事をしていると、同じような作業が続くこともあるでしょう。「こんなもの」と、日常に慣れてしまうのはあまりよくありません。先ほどもお伝えしたように、フロー状態は、高度なスキルを要するタスクを行っているときに起こりやすいもの。既存の方法だけにとらわれず、たまには「よりいい策はないか」と、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
4. スキルを身につけながら成長し続ける
趣味を楽しむためには「上達している!」と実感できる、ある程度のスキルが欠かせませんが、これは仕事でも同じこと。一定以上のスキルは、フロー状態に入るための特に重要な要素です。言い換えれば、フロー状態を体験するには、自分自身が成長することが必要なのです。

フロー状態は一種の快楽です。脳内ホルモンが放出され、やり終えた達成感や幸福感はほかには変えがたいもの。学生時代、部活動や勉強など夢中になったあとに感じた感覚ともいえます。

フロー状態は必ずしも仕事の効率化に直結するものではなく、科学的にも「幸福度を高めるもの」として認知されています。まずは自分の好きなことからでも構いません。究極の集中=フロー状態を身につけ、自分でコントロールできるよう、たくさんのことに挑戦してほしいと思います。惰性で続けるのではなく、辛いことを楽しみに変換しながら。自分なりのペースで、成長を手にしていってください。


本連載は、今回で最終回を迎えました。これまでの連載を通じて、皆さんの大切な時間をどう使うか、さまざまな観点からのコツやポイントをお伝えしてきました。これからも、仕事だけでなく私生活も豊かなものにしていただきたいと思います。

充実した時間を過ごすためのポイント

少し高度なスキルを使って、
多少難度の高いことに挑戦するのがポイント!
タスクに没頭できる「フロー状態」を身につけよう

PROFILE

池田 貴将
池田 貴将いけだ・たかまさ
株式会社オープンプラットフォーム代表取締役。リーダーシップ・行動心理学の研究者。大学在学中にアメリカへ行き、コーチング・目標達成・モチベーション理論を学び、起業。科学的根拠に基づいた独自メソッドを開発。著名人を含む、年間1万人以上がセミナーに参加し、高い評価を受ける。著書に『タイムマネジメント大全 24時間すべてを自分のために使う』(大和書房)、『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』(サンクチュアリ出版)、他多数。

記事公開:2025年2月