本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のOS、ブラウザーにアップデートしてください。

日々を充実させる!タイムマネジメントの技術

24時間を上手に使って、仕事もプライベートも充実させるコツを紹介します。
vol.2

ダラダラ時間のきっかけは?
受動的な時間を能動的な時間に変える
3つのステップ。

「受動的な時間」から抜け出せない! その原因となる「ランダムな報酬」とは。

前回は、自分の生活パターンを振り返って、ムダな時間を洗い出しました。ダラダラとスマホを触ったり、動画を観たりする「受動的な時間」はできるだけ減らしたいもの。そこで今回はつい意味もなく過ごしてしまう時間を、自己研鑽につながる「能動的な時間」に切り替えるコツをお伝えします。

興味深い情報がインターネットでいつでも気軽に得られる現代。スキルアップや仕事のためには有用な手法ですが、一方で、必要以上に時間を取られ、結果としてムダな時間を過ごしてしまっている人も少なくありません。仕事や勉強に必要な資料を探していたのに、気づけば関係のない動画やSNSを見ていた……なんて経験はないでしょうか。能動的に始めた時間もうっかりすると、受動的な時間に切り替わってしまいかねません。

このような行動原理は、研究によっても明らかになっています。アメリカの心理学者のマイケル・ゼイラーが1970年代に次のような実験を行いました。ボタンをつつくとエサが出てくる箱を用意し、その中にハトを入れ、様子を観察。するとハトは、必ずエサが出てくるときよりも、エサが出る確率を50〜70%に設定したときの方が熱心につついていたというのです。このことから、ゼイラーは「脳は決まったパターンで与えられる報酬よりも、予期しないときの報酬に喜びを感じる」ことを証明しました。たまに大きな当たり、つまり「ランダムな報酬」があるからこそ、より強く興味を惹かれるということです。

これは現代のネットサーフィンや動画のダラダラ鑑賞にもつながる原理と言えるでしょう。有益な情報を求めてインターネットで調べ始めても、出合うものすべてが有益とは言えません。しかし、時には探していた情報や意外なコンテンツに出合える(ランダムな報酬)ことがあるため、なかなかやめられなくなってしまうのです。

また、ネットサーフィンなどの受動的な時間は、お酒を飲みながら、お菓子を食べながらと、「ながら作業」でできてしまうため、特に目的もないままダラダラと過ごしてしまいがちです。ある研究によると、目的を持って能動的に楽しむときと比べ、なんとなくの惰性で過ごす時間は幸福感が低くなるという結果が出ていますが、ランダムな報酬に出合える受動的な時間は、依存性が高いため、なかなか抜け出せずに時間をムダにしてしまうのです。

ムダな習慣を招きやすい、インナー&アウターのトリガー連鎖

受動的な時間から抜け出せないときには、「トリガー(引き金)」に注目してみてください。トリガーとは、ある行動を起こすきっかけになるもので、「インナートリガー」と「アウタートリガー」の2つの種類があります。

インナートリガーとは、行動のきっかけが人の感情や生理的欲求であるときを指します。空腹を感じたことによって、「食べよう」と行動を起こすときが例に挙げられます。一方、アウタートリガーは、行動の引き金となるものが自分を取り巻く環境である場合を言います。これは、冷蔵庫に消費期限が切れそうなお惣菜があった、店先から美味しそうなにおいがしたなど、外部の情報が「食べよう」という行動のきっかけになっているときが例に挙げられます。

このインナートリガーとアウタートリガーの連鎖が、「習慣」をつくります。1日の仕事を終えて帰宅した人を例に考えてみましょう。帰宅後、「喉が渇いた」「リラックスしたい」というインナートリガーによって、「冷蔵庫を開ける」行為が生じます。さらにそこにビールがあれば、「ビールを見ること」(アウタートリガー)が「喉を潤す」「疲れがとれる」と認識させてしまい、つい手が伸びてしまうのです。このトリガーの連鎖で、「帰宅後にビールを飲む」という習慣が生まれます。

そして、一つ習慣ができると、それが別の悪い習慣を引き起こしてしまうことがあります。ビールを飲みながら、何気なくスマホを触ってしまう……というように一連の習慣がドミノ倒しのように起こってしまい、気づけばムダな時間を過ごしてしまうのです。

改善のために必要なのは、「ビールを飲む」といった習慣だけを変えようとすることではなく、受動的な時間につながる「トリガーの連鎖」を見直すことです。つまり、喉が渇いた(リラックスしたい)ときに、冷蔵庫を開けビールを見る、という点に着目し、トリガーを置き換えるのです。

3ステップでムダな時間を減らし、理想の過ごし方を実現!

では、受動的な時間のトリガーを減らすための方法を見てみましょう。以下の3つのステップが重要です。

1.1週間を見直し、受動的な時間に何時間費やしているか、振り返る

2.受動的な時間のトリガーを見つける

3.受動的な時間のトリガーをなくし、能動的な時間につながるトリガーを用意する

まず、前回ラベリングした時間を確認し、1週間のうち、受動的な時間に何時間費やしているか、洗い出します。1日に2時間以上、1週間に14時間以上を受動的な時間として過ごしている場合には、改善が必要です。

次に、その受動的な時間のトリガーを思い出してください。長時間SNSを見ていたとき、そのきっかけは何だったでしょうか。メールやアプリの通知など、小さなことがトリガーになっているかもしれません。

最後に、受動的な時間のトリガーがなくなるよう、環境を整えます。「帰宅後、喉が渇いたときにビールを見る」というトリガーの連鎖が起こっている場合には、冷蔵庫にビールではなく、炭酸水を入れておくといいでしょう。環境を変えるだけで、受動的な時間につながる一連の流れを抑制することができます。

また、「気持ちを高揚させたい」「リラックスしたい」と感じたとき、アルコールの代わりにウォーキングなどの軽い運動や入浴をしてみるのはいかがでしょうか。ノリのいい音楽を聴きながら一駅分歩いて帰ってみるのもいいでしょう。心拍数が上がり、気分が高揚して元気が出てきます。このように行動や環境を変え、受動的な時間につながるトリガーの連鎖が起きないようにすることで、ムダな時間を減らすことができます。

■ 受動的な時間のトリガーをなくす方法

しかし、いざ行動や環境を変えようと決心したとしても、なかなか実行できずに、結局ムダな時間を過ごしてしまうこともあるでしょう。

そこでおすすめなのは、能動的な時間につながるようなトリガーの仕掛けです。「やろうと決めた」ときに、実行に移しやすくなるような準備をしておくのです。例えば朝起きてランニングをしようと計画したら、翌朝の行動をイメージして、目覚ましをベッドから離れたところにセットしたり、ランニングウェアを目に見える場所に置いたりするなど、上手に自分を誘導できるよう、「お膳立て」してあげましょう。

また、自分なりの理想の過ごし方を考えることも効果的です。仕事でもプライベートでも構いません。やりたいこと、実現したいことを箇条書きにしてみると、自分にとって大切にしたいことが見えてくるはずです。具体的にイメージすることによって、理想的な時間の過ごし方をデザインできるようになり、受動的な時間は自然と減っていくでしょう。

充実した時間を過ごすためのポイント

受動的な時間に陥る「トリガー」を見つけたら
環境を整えて、能動的な時間につなげよう

PROFILE

池田 貴将
池田 貴将いけだ・たかまさ
株式会社オープンプラットフォーム代表取締役。リーダーシップ・行動心理学の研究者。大学在学中にアメリカへ行き、コーチング・目標達成・モチベーション理論を学び、起業。科学的根拠に基づいた独自メソッドを開発。著名人を含む、年間1万人以上がセミナーに参加し、高い評価を受ける。著書に『タイムマネジメント大全 24時間すべてを自分のために使う』(大和書房)、『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』(サンクチュアリ出版)、他多数。

記事公開:2022年12月