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日々を充実させる!タイムマネジメントの技術

24時間を上手に使って、仕事もプライベートも充実させるコツを紹介します。
vol.8

ムダな時間を過ごしていない?
悩んでいる時間を短縮する方法とは。

時間をかけたからといって、必ずしも良い選択ができるわけではない?

やるべきことが増えたとしても、時間は限られているもの。ムダをカットできれば、その分の時間を有意義な行動にまわせるはずです。日常生活において、なるべくカットしたい時間としては、「悩んでいる時間」「探し物をする時間」「後悔している時間」などが挙げられるでしょう。そこで今回は、仕事中に特に費やしてしまいがちな「悩んでいる時間」にスポットを当て、上手な減らし方と判断力を高めるコツをお伝えします。

最適な判断をしようと何度も考えを重ねるほど、あっという間に時間は過ぎてしまうものです。「もっと良いアイデアがあるのではないか?」「本当にこれでいいのか?」などと迷っているうちに、予定以上の時間がかかってしまった経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。

しかし、残念ながら“かけた時間”と”判断の中身“に相関関係はありません。つまり、長時間練って生み出した答えが必ずしも「正しい」わけではないのです。マーケティングに関する多数の著書を持つジャーナリストのマルコム・グラッドウェル氏によると、「時間をかけて下した判断だから正しいはず」と感じるのは錯覚に過ぎないといいます。

80人の学生の性格を外向性や協調性など5つの項目から分析し、どのような傾向があるか探ります。その結果を彼らの親しい友人と、全く面識のない他人がそれぞれ予想するという実験があるのですが、意外にも5つの項目のうち3つについては、他人の予想の方が分析結果に近いものになりました。実は、他人のグループにはそれぞれの学生の部屋を見せ、その上で予想させていたのです。それだけで、被験者である学生と長い時間を過ごしている友人の予想よりも“正解”に近づくことができました。判断する際に重要なのは“時間をかけること”ではなく、“短時間であっても、適切な情報に基づいて考え、判断すること”だということを裏付ける実験と言えるでしょう。

悩む時間を減らし、「時間が足りない」「失敗が怖い」を解消!

せっかく貴重な時間を費やしても、良い結果に繋がらなければ効率的ではありません。悩む時間を短くするために、次の具体的な方法を参考にしてください。

● タイム・プレッシャーで勢いづける

最初に私がおすすめするのは、物事に取り組む際にあらかじめ時間の期限を設定しておくことで、脳を活性化して効率化を図る「タイム・プレッシャー」。脳科学者の茂木健一郎氏も提案しているメソッドです。時間制限を設けると、その中でタスクをやり遂げようと集中力が高まり、余計な思考を断ち、失敗を減らすことができます。また、やり遂げることによって脳からドーパミンが放出され、これが「次の作業でもペースを落とさないようにしよう」「もっと早く終わらせよう」というモチベーションに繋がるのです。短時間で判断できれば時間を有効活用できるので、タスクをたくさん抱えているときにも有効です。

また、人間の創造性は自由度が高い状況よりも、ある程度の制約があった方が上がる可能性があるともいわれています。タイム・プレッシャーには決断力だけでなく、創造力向上の効果も期待でき、企画書など新たなアイデアを考える際にも有効です。

ただし、自分を追い込む切迫感は心身にとって負担にもなりえるので、どうしても短時間で終わらせたいタスクに取り組むときなど、状況を限定して使うようにしてください。

● 先にある“得られるもの”を意識する

なかなか決断を下せない際には、悩んだ先に何があるかを考えることも、時短のコツ。例えば、社内の報告書や他社へのプレゼン資料の作成で行き詰まったとき、一度落ち着いて“タスクを終えることで得られるもの”を想像してみてください。うまくいった際、どんなことが起こり得るでしょうか? 上司から評価され、周囲の信頼を得るかもしれませんし、企画が通れば新たな挑戦ができるかもしれません。

このように、うまくいったときの報酬を強く意識することで、失敗する不安やリスクに怯えることは少なくなるでしょう。また成功しているところから逆算することで、成し遂げるべきポイントや、やるべきタスクがより明確になります。結果として、短時間で作業を進めることができるほか、より正確で充実したアウトプットにも繋がります。自分の能力に自信が持てないときや、なかなか決断できないというときにおすすめです。

■ 悩んでいる時間を短縮する方法

朝の時間の活用と日常での意識が、判断力を鍛えるコツ

判断力が求められる作業はできるだけ午前中に行うようにすることも、ムダな時間をかけずに済むポイントとなります。以前本連載でお伝えしたように、何かを決定するための「意志力」は1日の始まりが最も強く、しかも1日に発揮できる量に限界があり、細かなことでも決断を重ねるうちに弱まっていきます。もし、夕方や夜に悩んで決められない場合は、一度休んで翌朝に再挑戦するといいかもしれません。

実は、日常生活のちょっとした場面でも決断力を上げるトレーニングはできます。何を食べるか、どの服を着ていくか、などは、多くの人が毎日考えながら決断していること。自分で「これにかける時間は5秒」など期限を設定して、頭の中でカウントダウンしながら、時間内に選ぶようにしてみてください。きっと脳がグッと集中しているのを感じられるでしょう。ゲーム感覚で続けるうちに、集中して決断する力が身につくはずです。

また、気をつけたいのは無理をして負荷をかけ過ぎないこと。意志力は筋力と同じで、疲れるほどに低下しますが、休むことで復活させることもできます。仕事で疲れたときには、自分なりのリラックスを。友人と話したり、好きな音楽や番組を視聴するなど、適切に休むことを心がけてください。

充実した時間を過ごすためのポイント

熟考した時間と成果は必ずしも比例しない。
時間を設定して集中力を上げ、
先を見据えて、効率のいい判断力を身につけよう

PROFILE

池田 貴将
池田 貴将いけだ・たかまさ
株式会社オープンプラットフォーム代表取締役。リーダーシップ・行動心理学の研究者。大学在学中にアメリカへ行き、コーチング・目標達成・モチベーション理論を学び、起業。科学的根拠に基づいた独自メソッドを開発。著名人を含む、年間1万人以上がセミナーに参加し、高い評価を受ける。著書に『タイムマネジメント大全 24時間すべてを自分のために使う』(大和書房)、『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』(サンクチュアリ出版)、他多数。

記事公開:2023年9月