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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.29 競争要因と優位性から
事業の経済性を分析・評価する。

競争環境から経済性を分析して事業を4タイプに分類

自社事業の経済性の分析は、経営者だけの業務ではありません。各事業の責任者、既存事業テコ入れの担当者、新規事業の立案者を始めとして、あらゆるビジネスパーソンがその手法を知っておいて損はない、といえます。

アドバンテージ・マトリックスは、業界の競争環境を分析して、事業の経済性を評価するフレームワークで、ボストン・コンサルティング・グループが考案した手法です。縦軸を「競争要因の数」、横軸を「優位性を構築できる可能性」とする、2×2のマトリックスによって、事業を4領域に分類します。

「競争要因の数」は、勝負の決め手がシンプルか、複雑かということ。競争要因が少なければ、競争手段が少ないために勝敗が単純に決まる傾向にある事業といえます。例えば、技術力さえあれば優位性を構築できる事業より、技術力に加えて、設備投資のための資金力が前提となる事業のほうが、競争要因の数は多くなるわけです。また、「優位性を構築できる可能性」は、大きいほど事業の収益性を高められます。

特化型事業(「競争要因・多」×「優位性・大」)
競争要因が多数あるものの、優位性を構築しやすい事業です。専門性が高く、比較的ニッチな業界が該当し、具体的には、不動産専門の広告代理業、外資系専門の人材派遣業などがあてはまります。また、計測機器、製薬といった業界は、このタイプといえます。特定分野で強みを生かせれば、大きな成功が期待できる事業分野です。
規模型事業(「競争要因・少」×「優位性・大」)
他社との差別化がしにくく、差別化を図っても競合優位性を獲得しにくい事業です。規模を大きくすることで優位性を得られ、生産量や市場シェアが大きいほど、事業の収益性が高まります。素材産業、ライフラインなどのインフラ事業や、自動車業界、半導体業界などがあてはまります。とるべき基本戦略は、市場シェアの拡大です。
分散型事業(「競争要因・多」×「優位性・小」)
競争要因が多いうえに、優位性の構築が難しい事業で、大企業が少ない領域です。規模を小さく保つことが成功のカギとなります。事業が小規模な段階では収益を上げられても、大規模になると収益性の維持が難しくなります。地域密着型の飲食店や、職人技が頼りで量産できない製造業などが典型例。アパレルや建築といった業界は、この領域に分類されることも。
手詰まり型事業(「競争要因・少」×「優位性・小」)
差別化も規模拡大も効果が出にくい事業です。多くの企業が収益を上げられない「構造不況業種」と呼ばれる事業で、鉄鋼やセメントなどが該当します。小規模企業が淘汰され、大手も規模の効果が限界に達し、優位性の構築ができなくなっています。経済性の観点からは、新規参入は控え、すでにここにいる場合は早期撤退が望ましい分野です。

※ フレームワーク・・・経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネス局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

アドバンテージ・マトリックスで見る事業の経済性
アドバンテージ・マトリックスは、「業界の競争要因の数」と「優位性を構築できる可能性」の2軸によって検討し、事業を4タイプに分類して分析します。それぞれの事業タイプ別に、「規模」と「収益性」の関係を用いて、その事業の特徴を表します。

事業タイプの転換を図って収益性を確保するのも手

事業によって安定した収益を長く確保していくには、事業を見直し、特化型、規模型へ転換させて、優位性を構築していくのも、事業戦略として効果的です。
例えば、ファミレス事業。飲食店は一般的に分散型事業に分類されますが、ファミレス大手はセントラルキッチンの導入で規模の経済を構築し、規模型事業へと転換を図りました。

特化型なら「コア・コンピタンスの強化」、規模型なら「シェア拡大」にさらに注力する取り組みで収益性を上げることは可能です。
また、事業のタイプ転換がすぐには困難でも、分散型の場合、本業の規模を大きくしないまま、運営ノウハウなどをパッケージ化し、フランチャイズや教育事業といった量産可能なソフトビジネスを展開していく方法も考えられます。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2020年5月