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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.32 外的要因を分析して
チャンスとリスクを予測する。

ビジネスに影響を与える4種の外的要因

自社事業の先行きを見通すうえでは、社内の状況に加え、外的要因(外部環境)も重要です。とりわけ、マクロな外部環境は、市場全体の変化に大きな影響をおよぼす可能性があるため、常に状況や動向に注目し把握しておく必要があります。

マクロな外的要因を分析するためのフレームワークが「PEST分析」です。「PEST」とは、マクロな変動要因である政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4項目の頭文字をとったものです。PEST分析は、これらのマクロな外的要因が自社のビジネスにどのような影響を与えるのかを分析し、把握する手がかりとなります。

【政治的要因】
政権交代、政府の方針転換、業界法の改正、規制の強化・緩和、外交問題などが含まれます。例えば、人材派遣法の改正によって、これまでは派遣が禁じられていた職種が認可されることで、人材派遣業ではビジネスチャンスが生まれます。
【経済的要因】
景気動向、物価の変動、GDP成長率、失業率、鉱工業生産指数、住宅着工数など、あらゆる経済指標や将来的見通しがこれに含まれます。例えば、海外で製造を行っているメーカーであれば、円高になると現地の人件費、固定費等が総体的に安くなるため、ビジネスの追い風になります。
【社会的要因】
人口動態、文化、教育制度、ライフスタイルや価値観の変化などが含まれます。例えば、社会の少子高齢化がさらに進むことで、学校経営や未成年の受験教育といった分野が厳しい局面に向かう一方で、シニア向けサービスや介護ビジネスの分野が成長します。
【技術的要因】
画期的な新技術の登場、およびその普及による市場の変化などが挙げられます。革新的技術は、新たな市場をもたらす一方で、既存の市場を縮小へ追い込む可能性があります。例えば、インターネットの登場と普及で、ネット広告市場が拡大の一途をたどる反面、新聞や雑誌といった既存メディアの広告市場が縮小していくといった現象がそれにあたります。
人材派遣業への進出を検討する企業のPEST分析例

同じ外的要因でも企業によって追い風にも逆風にも

「PEST」は4項目の外的要因の頭文字ですが、くしくも、新型コロナウイルスと同様に、過去に世界的なパンデミックを何度も引き起こした感染症「ペスト」の猛威は、社会構造の変化をもたらすほどの大打撃を多くの国と地域に与えました。

また、歴代最長となった安倍政権が突然の終わりを迎えたのも記憶に新しいところです。「一寸先は闇」といいますが、PEST分析を使い、さまざまなマクロ環境の変化が自社にとって何をもたらすのかを予測することは、こうした不測の事態への対応を考えるうえで有効な手段となります。

また、同じ環境の変化であっても、業種や企業によって逆風になる場合もあれば、追い風になる場合もあります。例えば、「コロナ禍で事業縮小を迫られる取引先が増え、結果的に当社の売上が下がった」場合もあれば、「コロナの影響でリモートワークが見直され、取引先のアウトソーシングが拡大した結果、当社への依頼が増えた」というケースもあるのです。こういう時だからこそ、PEST分析で自社のチャンスとリスクを見直しておくのが大事かもしれません。

いずれにせよ、考えられる外的要因をしっかりと洗い出して、そこから将来的に想定される機会や脅威をできるかぎり予測しておくことです。なお、要因の洗い出しに関しては、各分野の専門家など、なるべく異なる立場の人に手伝ってもらうと、より客観性が増し、成果を上げやすくなります。

そして、この連載の第1回で取り上げた「SWOT分析」を連動させ、自社の強みと弱みを掘り下げて再確認しておくと、より効果的な見通しができるでしょう。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2020年9月