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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.35 新年度の目標、どう立てる?
頭の中を「見える化」する技術で一歩先へ。

「人間の記憶の構造」を利用して理解をスピードアップ

すっかり寒さもゆるみ、新年度がやってきました。事業プランの見直しや新規事業の立ち上げなどを進めている企業も多いでしょう。また、自身のキャリアアップのために新たなチャレンジをしたいと考えている方も少なくないかもしれません。第一線に立ち続けるビジネスパーソンにとっては、新たな目標を明確に設定し、よりよいスタートを切れるかどうかが、今後の成功のカギとなります。

こうしたタイミングで役立ててほしいのが、自らの頭の中にあるさまざまな情報を視覚化するための思考ツール「マインドマップ」です。1960年代に英国の教育者、トニー・ブザン氏が提唱したもので、2000年代後半から日本でも取り入れられるようになりました。

これは具体的には、1枚の紙に絵を描くようなイメージで、メインテーマ(解決すべき課題や新規プロジェクトなど)を中央に据え、そこから放射状にキーワードやイメージをつなげていき、発想を発展させていく方法です。

複雑な構造をもつ情報が端的に表現できるマインドマップの形は「人間の記憶の構造」に似ているといわれており、そのため、より早く理解が進む効果があるとされています。

マインドマップには、次の特色があります。

  • 中心から放射状に、段階的に項目を書いていくため、発想を発展させやすい。
  • 「新商品の企画」「ブレストのアイデアメモ」「経営課題の抽出」「自分のTo Doリスト」「個人的な思考の整理」「読書後のメモ」など応用範囲が広い。
  • 全体をひと目で俯瞰しやすく、項目ごとの関連性を把握しやすい。
  • イラストや写真などを添えて構成できるため、感覚的に理解でき、記憶に残りやすい。

アナログでも、デジタルでも!
マインドマップの作成手順

マインドマップは従来、紙にペンを使って描く手法が広く使われてきました。現在では、マインドマップ作成ツールがアプリなどでいくつも出ているので、それらを活用して作成することも可能です。

作成の基本的な手順は以下のとおりです。

【STEP1】メインテーマを決める
中心となるテーマ(課題、アイデアの源)を決めて中央に配置。
【STEP2】枝の項目を作る
中心となるテーマから枝をつけて、関連するトピックを配置。
【STEP3】枝の先を作る
枝の項目に関連するキーワードや項目を、細分化して枝を増やすように記入。枝の項目ごとに書き加えていく。
【STEP4】イラストや写真を用いる
枝の項目やその説明にイラストや写真など、より感覚的に理解できるものを配置。枝の色を変えるなどわかりやすくすると、さらに効果的。
【STEP5】グループ化する
グループ化できそうなものは線で囲む、つなぐなどして関連性がひと目でわかるようにする。

こうしてメインテーマからさまざまな項目を派生させ、まとめて整理していくことで、具体的な指針ややるべきことが定まっていきます。

「組織改編」について考えるときのマインドマップの例

発想の自由度を最優先にして、より効果を高めよう

マインドマップに近い思考ツールとして、ピラミッド型の「ロジックツリー」があります。マインドマップは、ロジックツリーに比べると、MECE(情報の漏れや重複がない状態)をあまり緻密に行う必要がない点に特徴があるといえるでしょう。

つまり、マインドマップは、出発点の項目から自由な発想で発展させられるのが、最大のメリットです。発想の自由度が最も大切になるような場面で、気軽に活用することをおすすめします。

またマインドマップは、人間の記憶の構造を模倣して思考を落とし込んでいくもののため、一人で作成するのが基本ではありますが、ブレストの場面などではグループで作成しても有効です。

例えば、既存事業のテコ入れでは「事業のプラス面を強化する改善」「事業のマイナス面をなくす改善」といったアプローチに使えます。さらに、新規事業のアイデア出しでは「異質なものを組み合わせて事業を生み出すイノベーション」「従来とは正反対となる逆転の発想で生み出すイノベーション」など、さまざまなアプローチで活用できるはずです。

普段の会議では「ただの連想だから」「他の人の意見と似ているから」と遠慮して出せない意見の中に、思わぬアイデアが眠っているかもしれません。コロナ禍では「密」の環境は推奨されませんが、先述のマインドマップ作成ツールにはクラウド型のものもあり、オンライン上で共有しながら作成することが可能です。それぞれの状況に合わせて、自由な発想を生かしてビジネスを成功に導いていきましょう。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2021年4月