まずは「抑揚」のつけ方です。
いろいろな方のスピーチを聞いていると、抑揚のある話し方をする人の言葉ほど、「自然に耳に入ってくる」と感じるのではないでしょうか? 逆に、抑揚のないスピーチは、耳や心に引っかからず内容が入ってこないため、何となく退屈な印象を受けてしまうものです。
あまりにも抑揚がなさすぎると、言葉をしゃべっているというよりも、例えばピアノの同じ音を連打されているようにすら聞こえて、何となく耳障りに感じたりすることもあります。
言葉は音楽と同じです。音の高低や大小、リズム感がある音は耳に心地よく聞こえ、反対にそうした変化のない単調な音は退屈に感じてしまうのです。つまり、スピーチをするときも、歌を歌ったり、音楽を奏でたりするのと同じように、音とリズムの変化を付けることが大切。それが「抑揚」となるわけです。
では、抑揚のつけ方について具体的に説明しましょう。
音楽を奏でる場合、「出だしは小さく、クライマックスは大きく」といったように、曲全体の中で抑揚をつけるのが通例です。その一方、小節などの小さな「区切り」の中でも、音を急に大きくしたり、リズムを変えたりする細かな表現が行われます。それと同じように、スピーチにおける抑揚のつけ方も、「スピーチ全体」と「個々の文章の読み方」のそれぞれにとって最適な方法があります。
まずは、「スピーチ全体」で抑揚をつける方法です。
スピーチの出だしは落ち着いたトーンで。中盤はやや声を大きくして、感情を込めて話してみましょう。そして終盤には、また落ち着いたトーンに戻って締めくくります。この抑揚のつけ方を意識するだけでも、スピーチ全体の印象はずいぶん変わるはずです。
次に、文章の1つひとつに細かく抑揚をつける方法です。
本連載では、声のメリハリのつけ方や、息継ぎの方法などについて説明してきましたが、それらのテクニックをまとめて活用します。
まずは、スピーチの原稿(台本)を用意し、そのポイントとなるところに次のようなマークを書き込んでください。
- 単語の頭でしっかり息を吐くところは、「〇」をつける
- 音量は「大」「小」のマーク
- 強調したいところは「□」で囲む
- ゆっくり話すところは波線(~~~)
- 語尾を上げるところは斜め矢印(⤴)
- リズムをつけるところ、間を置くところはブレス(V)のマーク
実際にマークを書き込んだ原稿の例は、以下の通りです。
つまり、原稿を音楽でいうところの「楽譜」に見立てて、抑揚記号を付けておくのです。本番の前に何度か練習をしておくと、より自然に抑揚がつけられるはずです。