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実践! ビジネスボイトレ講座


仕事の成果につながる、「いい声」を手に入れる方法を紹介します。

vol.09 力強く、よどみなく話せるようになる
上手な「息」の使い方。

普段から腹式呼吸で話せるようにするには?

本連載vol.2で、「腹式呼吸」のトレーニング方法について紹介しました。

腹式呼吸は、おなかの筋肉を使って息を深く吸い込むため、吐く息の量も多くなり、声帯がしっかり振動して、聞き取りやすい声が出せるようになります。

声が力強くなるので、会議や商談のときに腹式呼吸を心がけると、信頼感や説得力が増すという効果も期待できます。

相手に伝わりやすい、いい声を出すうえで欠かせない基本となる呼吸法なので、いざというときに備えて、普段から腹式呼吸で会話できるようにすることが大切です。とはいえ、日ごろから常に意識しておくのは大変です。

では、トレーニングのときだけでなく、いつでも腹式呼吸で発声できるようになるには、どうしたらいいのでしょうか。

「単語の頭で息を強く吐く」だけで声が力強くなる

とても簡単な方法を教えましょう。

それは、「単語の頭で息を強く吐く」こと。

たったそれだけです。

長い文章を読んだり、長く話し続けたりするときでも、この方法なら腹式呼吸を持続させることができます。

テレビでアナウンサーがニュースを読んでいる場面をよく観察すると、読み始めから終わりまで、ほぼ一定の強さで声を出していることが分かります。

同じことを一般の人がやってみると、意味のないところで力んだり、最後まで息が続かなくて声が弱くなったりと、なかなか安定しません。

長い文章を一気に話そうとするため、どうしても途中で不安定になってしまうのです。また、日本語は胸式呼吸になりやすく、吐く息の量も少なくなるため、安定した声を出しにくくなります。

一定の声の強さで話し続けるには、一つひとつの単語あるいはフレーズを意識して、はっきりと発音する必要があります。

それを可能にするのが、「単語(またはフレーズ)の頭で息を強く吐く」という方法なのです。

日本語の単語は、2文字から6文字で構成されているものが多いです。その最初の文字で強く息を吐くことで、後に続く息をコントロールしやすくなります。

そうすれば自然と腹式呼吸になりやすく、一定の調子で話せるようになります。

では、実際にやってみましょう。

つも 世話に って ります」

た ひ んか せて ださい」

提案 せて ただきます」

「太字・下線」の付いたところで、息を強く吐きます。

腹式呼吸で発声しながら話す方法

話しているときに、口から0.5~1cmくらい離したところに手を持ってきてみてください。単語の頭を発声したときに、息が少しでも感じられるようであれば、腹式呼吸ができている証拠です。

もし息が感じられなかったら、胸式呼吸寄りになっているので、もう少し強めに息を吐くようにしてみましょう。

はじめはぎこちないかもしれませんが、自然にできるようになると相手が感じる印象は大きく変わってくるものです。会議や商談のときだけでなく、普段のあいさつや自己紹介のときでも、この方法は効果的です。

流ちょうに話せるようになる「0.5秒ブレス」

上手に息を使うためには、吐き方だけでなく、吸い方のコツも覚えるといいでしょう。

長く話し続けていると、だんだん声が弱くなり、最後は息も絶え絶えになってしまう……なんてことはないでしょうか。プレゼンや商談など、1人で長く説明したり話したりするとき、息つく暇もなく早口でしゃべってしまう方もいるでしょう。多くの場合、途中で息が続かなくなり、呼吸が安定しなくなってしまうものです。

こうした場合にアドバイスしたいのは、適切に息継ぎをすることです。話している途中、文章の句読点にあたるところで、わずか0.5秒だけ鼻で「スッ」と息を吸ってみましょう。相手に知られないように素早く息継ぎをするので、「0.5秒ブレス」と名付けています。文章の句読点は、話し言葉でも切れ目にあたる部分なので、スッと息を吸っても、それほど気付かれることはありません。

なぜ口ではなく、鼻から息を吸うのかというと、自然とおなかに空気が入り、腹式呼吸になりやすいからです。反対に口で息を吸うと、のどや胸のあたりに一瞬力が入って、胸式寄りの呼吸になってしまいます。腹式呼吸に慣れていない方にとっても、鼻から息を吸うことで腹式呼吸を意識しやすくなるでしょう。

ちなみに、プレゼンや結婚式のスピーチなどでは、マイクを使って話すこともありますが、口で息継ぎをすると、「すーっ」という音をマイクが拾ってしまいます。その点、鼻で息継ぎをすれば、マイクが音を拾いにくくなります。

息の吸い方をちょっと工夫するだけで、よどみなく、力強いプレゼンやスピーチができるようになるでしょう。ぜひ試してみてください。

「いい声」になるためのコツ

長く話し続けるときは、
単語の頭で息を強く吐き、
句読点で「0.5秒ブレス」を

PROFILE

秋竹 朋子
秋竹 朋子あきたけ・ともこ
ビジネスボイストレーニングスクール「ビジヴォ」代表。東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。ビジヴォの代表として、「声」「話し方」に問題を抱えるビジネスパーソンの指導を実施。音楽家・声楽家ならではの聴力と技術を駆使した、日本初「超絶対音感」によるボイストレーニングが話題を呼び、TVほかマスコミ出演も多数。東京を拠点に全国各地で企業研修やセミナーを行う。著書に『1分間声トレ』『ビジネスがうまくいく発声法』など。

記事公開:2023年5月