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今日からはじめる「アンガーマネジメント」

怒りの感情と上手に付き合い、コントロールする方法を紹介します。
実践すれば仕事も人間関係もよりスムーズになるはず!

vol.8 上司に言い訳や文句を言いそうになったとき
試してみたい「言い換え」あれこれ。

プレッシャーにさらされている上司の気持ちを考えてみる

前回に続いて、怒りの言葉をぶつけそうになったときの「言い換え」のテクニックを紹介します。今回は、上司に対する言葉の言い換え方です。

ここ数年、職場での「パワーハラスメント」(パワハラ)が社会問題となっています。

パワハラとまではいかなくても、つい感情に任せて部下を怒鳴ったり、嫌みを言ったりする上司は、職場の中に1人や2人はいるものです。

理不尽に怒鳴られたときに、カッとなって上司に反発してしまいたくなる気持ちはよくわかります。しかし、言い争った上司とは、会社勤めを続ける限り、ずっと顔を突き合わせなければなりません。そう考えると、どんなに嫌なことを言われたとしても、まずは6秒間、理性が働くのを待つのが賢明だといえるでしょう。

上司の中には、自分の思いを言葉で表現するのが苦手で、悪気はないのに、つい理不尽な言葉で部下を責めてしまうような人もいます。

また、多くの上司は、任されている部署の管理や予算の達成など、常に重いプレッシャーにさらされています。しかも、膨大なタスクを限られた時間で処理しなければならず、心の余裕をなくしてしまいがちです。

そうした心理的負担や余裕のなさに対する想像力を働かせて、相手(上司)を思いやる気持ちになることも、怒りを抑えるポイントだといえそうです。

自分に言い聞かせるつもりでポジティブな言葉に換える

一般に心理的余裕のない上司は、自分が管理する部署の営業成績が下がることには非常に敏感です。上から責任を問われることを恐れ、部下に対して、

「新しい営業先を開拓しろ」

と発破をかける人も少なくありません。

しかし、営業成績が上がらないのは、市場自体の縮小が原因であるケースもあります。その場合、新規開拓をしても、成果が上がる見込みはそれほど大きくありません。
仕方がないので、

「とりあえずやってみますが、ダメかもしれません」

などと言ってしまいがちですが、これではプレッシャーに押しつぶされそうになっている上司の気持ちを逆なでしてしまう恐れがあります。

「とりあえず」という言葉は、ポジティブにもネガティブにもなる表現ですが、この場合は「ダメかもしれません」という言葉が続くので、ネガティブな表現として受け取られてしまうのです。

無理な課題を突き付けられた部下側としてはプレッシャーを感じるはずですが、上司もそれ以上のプレッシャーにさらされています。こんなときは、お互いの気持ちを奮い立たせられるようなポジティブワードを返すのが望ましいといえます。

例えば、

「まずはやってみて、ダメだったら新たな作戦を練ってみます」

と、言い換えてみてはどうでしょうか。

これなら、「やる気を持っている」というポジティブなニュアンスが伝わるので、上司も安心してくれるでしょうし、新たな作戦を練る際には力を貸してくれるかもしれません。そして、この言葉によって自分自身の「やる気」に火をつけることもできるはずです。

上司の間違いはストレートに指摘しないのが賢明

普段、文句を言われてばかりいる上司には、ついリベンジをしたくなるのが人情です。
例えば、上司から「この書類を提出しておいてくれ」と言われたので、目を通してみると、誰が見ても明らかな間違いがあったとします。

そんなとき、

「これ、間違っていますよ」

と、ストレートな言い方で間違いを指摘すると、普段からの鬱憤(うっぷん)が晴れて、すっきりするかもしれません。しかし、これでは上司の面目がつぶれてしまいますし、周りに人がいると、なおさら恥をかかせることになります。今後、上司から自分への当たりも強くなるかもしれません。

こんなときは、相手のことを思いやって、次のように言い換えてみてはどうでしょうか。

「わたしの勘違いかもしれませんが、ここは間違っていませんか?」

このように、「自分はよくわからないのだけれど……」というへりくだった言い方をすれば、角を立てることなく間違いを指摘できます。

上司に言い訳や文句を言いそうになったときの「言い換え」例

ただし、この言葉は周りに人がいないところで伝えるのが無難です。人がいるときには、時間を置いていなくなってから伝えるようにしましょう。コミュニケーションでは、「何をどう伝えるか」だけでなく、「どんな状況やタイミングで伝えるか」ということも非常に大切です。

「そんなことに気を遣うのは面倒だ」と感じるかもしれませんが、相手の感情を無駄に逆なでしないことは、最終的には自分のためでもあります。上手に自分の言葉をコントロールして上司と向き合い、キャリアも上向きにしていきましょう。

「怒り」をコントロールするためのコツ

相手の立場を思いやった
言葉を、適切な状況と
タイミングで伝える

PROFILE

安藤 俊介
安藤 俊介あんどう・しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をアメリカから導入した日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナーなどを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、他多数。書籍は中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなどでも翻訳され、累計発行部数は58万部を超える。

記事公開:2021年11月