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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.14

ひと目で内容を把握でき、直感的に理解できる!
伝わる「図解」の大原則(1)

図解は型を知り、選ぶことから

一人歩きする資料の表現方法には、前回紹介した「箇条書き」と、「図解」「グラフ」の3種類がありますが、今回は「図解」について見ていきましょう。

図解には、「読み手が見た瞬間に内容を把握できる」「感覚的に論理を理解できる」という効果があります。文字で説明するだけでなく、図解することで分かりにくさを緩和し、より読みやすい資料を作ることができます。

図解は、「人を動かす」一人歩きする資料を作成するのに欠かせない表現方法ですが、どう使えばいいのか分からないなど、苦手意識を持つ方も多いのではないでしょうか。

図解を使いこなすポイントは、「図解の型を選ぶ」「情報を図解化する」です。そこで、今回から2回に分けて、順番に解説していきます。

まずはコレから! 押さえておきたい6つの基本図解

図解に苦手意識を持つ大きな理由として、「型」を知らないことが挙げられます。図解には、基本となる6つの型があります。それぞれどのような場合に使用すればいいのか、特徴を見ていきましょう。

基本図解の6つの型

本連載vol.6で立てた仮説に基づいて収集した情報を図に落とし込むためには、ロジックツリーで整理した情報の関係性を見抜くことが大切です。そのために重要なのが「時間の流れ」と「因果関係」です。情報の関係性に合わせて、6種類の図解の中から適切なものを選びましょう。

(1)「列挙型」:同じ階層の各情報の間に因果関係がない
同じ階層の各情報の間に原因と結果の因果関係がなく、それぞれが独立している場合に適した図解です。列挙するだけですが、多くの場合、この型に当てはまるので使いやすいでしょう。例えば、社内の課題を挙げるときなどに向いています。なお、前回「小見出し」を付けた例として紹介した「今期の売上」スライドは、列挙型です。

(2)「背景型」:1つの結果の背景に複数の原因がある関係
複数の要素が1つの結果の原因になっている場合に適した図解です。列挙型よりも全体像を見せることに向いています。1つの事象の背景に複数の事柄があるとき、例えば、売上低下という結果に対して、考えられるいくつかの原因を挙げる場合などに使用します。

列挙型と背景型の例

(3)「拡散型」:1つの原因が複数の結果につながる関係
1つの原因が時間の流れとともに複数の結果につながる場合に適した図解です。1つの要素が複数の要素に拡散する場合など、波及効果を表します。例えば、インターネットの普及がネットショッピングやネットバンキングの活性化につながったことを示す場合などです。

(4)「合流型」:複数の原因が1つの結果につながる関係
複数の原因が時間の流れとともに1つの結果につながる場合や、複数の要素が1つに統合する場合に適した図解です。拡散型の逆の型になり、因果関係や統合を表します。ポイントは、過去から現在、あるいは未来へと時間が経過していることです。

拡散型と合流型の例

(5)「フロー型」:要素の間に時間の流れがある場合
要素と要素の間に時間の流れがある場合に適した図解です。作業フローや業務フローなど、物事が順番に行われる場合が典型的な例となります。

(6)「回転型」:要素の間に循環の流れがある場合
要素と要素の間に時間の流れがあり、循環している場合に適した図解です。PDCAサイクルや容器リサイクルの流れなど、何かの改善サイクルを示す場合などに向いています。

フロー型と回転型の例

このように、それぞれの情報の関係性によって、6つの型の中から適切な図解が決まります。ロジックツリーを図解することで、読み手は直感的に各要素の関係性を理解できるようになります。

応用図解を覚えれば、表現の幅が広がる!

6つの基本図解を理解したら、応用図解に挑戦してみましょう。より幅広い表現が可能になります。ここでは、代表的な3つの型を紹介します。基本の図解とは異なり、応用図解ではいずれも縦横2軸で情報を整理しています。自分の主張を伝えるため、何かと何かを比較し、共通点、類似点、相違点を示す場合に効果的でしょう。

(1)「対比型」:2つのものを比較する
商品やサービスなど、対照的な異なる2つのものを複数の観点で比較する場合に使います。横軸には比較対象となる商品やサービスを配置し、縦軸には比較するための項目を配置します。例えば、自社と他社の製品を比較する場合などによく用いられます。

(2)「マトリックス型(表型)」:複数の情報を一覧できる
情報を表のように表現する図解で、定性的な情報を示すために用います。比較対象が3つ以上あるときに便利です。対比型と似ていますが、対照的な2つの商品やサービスを並べる対比型に対して、マトリックス型は自社の複数のサービスや商品を示したり、競合各社の特徴を一覧で示したりするような場合に使われることが多いです。なお、要素が多くなる場合は、単に枠線で区切る表の形にした方が情報を整理しやすくなるでしょう。

(3)「ガントチャート型」:計画を示す
計画を示すための図解です。さまざまな作業を時系列で整理して見せることに向いていて、特に工程を表す場合に用いられることが多いです。1列目に工程の大分類、2列目に中分類を示すと、計画がより分かりやすくなります。

応用図解の3つの型の例

今回は「図解の型を選ぶ」について詳しく解説しました。図解の型を知り、適切な型を選んだ後はいよいよ図を作成していきましょう。資料作成時は複数の図形にテキストボックスを組み合わせて使うため、作業に時間がかかってしまいがちですが、正しいポイントを理解すれば、効率的な図の作成が可能になります。

次回は「情報を図解化する」にあたって、重要部分の強調の仕方、より分かりやすい図解のための表現方法などを説明します。相手に伝わる一人歩きする資料作りに欠かせない図解について、さらに詳しく紹介していきます。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2023年2月