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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.9

いよいよプレゼンテーションソフトの出番!
スケルトン作りの大原則(1)作業を効率化する鉄則。

「スケルトン作り」の最初のステップ~スライドレイアウトの作成

前回は、資料作成の完成度を左右する情報収集の重要性を説明しました。ストーリーを作成し、それに基づいて情報収集を行ったら、いよいよプレゼンテーションソフトを使って作業していきます。

ですが、いきなりプレゼンテーションソフトを使って図解やグラフを作る前に、まずは「スケルトン」を作ります。スケルトンとは、スライドタイトルとスライドメッセージだけが記載された複数枚のスライドのことです。

スケルトン作りの3ステップ

「スケルトン作り」の3つのステップについて、2回に分けて説明していきます。今回は、ステップ1「スライドレイアウトを作成する」ための具体的な方法や手順を解説します。

スライドレイアウトとは、全てのスライドに表示する要素(企業ロゴやスライド番号)、または、スライドタイトルやスライドメッセージの位置、形式(フォント、フォントサイズ)などをあらかじめ設定したスライドのことです。「スライドマスター(テーマ)」機能を使って作成します。例えば、パワーポイントであれば「スライドマスター」、グーグルスライドであれば「テーマ」が同様の機能となります。

スライドレイアウトの例

スライドレイアウトの作成には、次の3つのメリットがあります。

1.相手の理解が早くなる
レイアウトを決めておくことで、相手がスライドのどこにタイトル、メッセージがあるか把握できるため、理解しやすい資料になる。
2.資料作りが早くなる
同じレイアウトを使用することで、スライドのどこに何を配置するか迷わなくなるため、迅速な資料作りが可能になる。
3.資料の統合・共有がラクになる
あらかじめ同じレイアウトを使用することで、他の人と共同で資料を作成する際に統合や共有がラクになり、仕事が効率化できる。

こうしたメリットがある「スライドレイアウト」ですが、次の4つのポイントを踏まえて、作っていきましょう。

(1)スライドレイアウトを準備する
(2)スライドの範囲を決める
(3)スライドタイトル欄、スライドメッセージ欄を設定する
(4)企業ロゴ欄、出どころ欄、スライド番号欄を設定する

スライドレイアウトの作成~スライドの設計図「スライドマスター」を設定する

実際にスライドマスター機能を使う際には、初めに最低限必要となる設定を行いましょう。まずは、(1)スライドレイアウトを準備します。

スライドマスター画面を開くと、一番上に大きいサイズのスライドが出るはずです。これを「スライドマスター」と呼び、全てのスライドに共通する変更を加えるためのスライドです。

それより下のスライドは、「スライドレイアウト」と呼ばれますが、あらかじめ用意されているものはほとんどの場合、使用しません。1枚目と2枚目のみを残して、それ以外のスライドレイアウトは全て削除します。

これで残ったのは、「1枚のスライドマスター」と「2枚のスライドレイアウト」になります。2枚のスライドレイアウトのうち、1枚目を「タイトルスライド」、2枚目を「コンテンツスライド」と呼びます。スライド冒頭に位置するタイトルスライド(表紙)の作成以外は、コンテンツスライドを使います。

スライドマスターとスライドレイアウト

もう一つ設定しておきたいのがスライドサイズです。プロジェクターなどを使ったプレゼンテーションであれば、「4:3」や「ワイド」が適しているのですが、一人歩きする資料として配布する場合は、A4サイズに合わせるとコンパクトに印刷できます。

スライドレイアウトの作成~「ガイド」を使ってスライドの範囲を決める

スライドレイアウトの準備ができたら、(2)スライドの範囲を決めます。ここからは、コンテンツスライドを使用します。

そこで、おすすめなのが「ガイド」機能です。これは、スライドの使用範囲を決めるツールで、ガイドで範囲を指定しておけば、スライドごとに図形の位置などで迷うことがありません。端がそろっていることで、正確さや視認性が高まり、より洗練された資料になります。基本的に図形の左端は一番左のガイドに、右端は一番右のガイドに合わせます。

ガイドを使って範囲を決める

スライドレイアウトの作成~劇的に見やすくなるコンテンツスライドの設定方法

スライドの範囲を決めたら、次は、(3)スライドタイトル欄、スライドメッセージ欄を追加します。本連載vol.5で解説した「スライドタイトル」と「スライドメッセージ」を実際に挿入する代わりに、“ここにスライドタイトルを入力する” “ここにスライドメッセージを入力する”という枠を作ります。読みやすく理解しやすい資料にするために、コンテンツの位置やフォント、フォントサイズなど、共通の設定を行うわけです。

引き続きコンテンツスライドを使い、「1.スライドタイトル欄を作る」「2.区分線を引く」「3.スライドメッセージ欄を作る」の3つの手順で設定していきます。

1.スライドタイトル欄を作る
コンテンツスライドを選択したら、次の図のように作成します。

スライドタイトル欄の設定

2.区分線を引く
スライドタイトルとスライドメッセージの間に区分線を引くため、次の図のように作成します。

区分線を引く

3.スライドメッセージ欄を作る
テキストボックスを使って、次の図のように作成します。

スライドメッセージ欄の設定

コンテンツスライドにはメイン情報のほかに、スライドを作成した企業、情報の根拠といった副次的な情報が必要です。そこで、最後に(4)企業ロゴ欄、出どころ欄、スライド番号欄を次の図のように追加します。

企業ロゴ欄、出どころ欄、スライド番号欄の設定

プレゼンテーションソフトでの資料作りの際、スライドタイトルかスライドメッセージのどちらかのみ使用するケースを見かけることがありますが、スライドの内容を明確にするためには両方使用するのがおすすめです。また、スライドメッセージは、スライドタイトルとセットで必ず上部に配置すること。なぜなら、読み手が最初にスライドタイトルとスライドメッセージの両方を見て、スライドのテーマと主張をいち早く理解できるからです。一人歩きする資料を作成するときには欠かせないテクニックです。

次回は、「スケルトン作りの大原則」の後編です。本連載vol.5で解説したストーリーを、資料の要となるタイトル、サマリー、目次、結論に落とし込んでいく方法について解説します。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2022年6月