企業によるクラウドストレージ導入の
メリットや注意点は?
画像・動画を安全かつスムーズに共有するための
選び方も解説
コスト削減や利便性アップなどにつながるとして、社内のファイルをクラウドストレージで管理する企業が増えています。しかし、サービスの種類や提供会社もさまざまで、クラウドストレージとは何かという定義や、選び方が分からないという方も多いと思います。そこで改めて、クラウドストレージの概要と、企業がサービスを導入する場合のメリットや注意点を紹介します。
特に、広報・宣伝・販促部門などでは、大容量の動画・画像ファイルの送受信や管理を日常的に行うだけでなく、発売前の新製品などの機密情報も扱うため、情報漏えいを防ぐ高いレベルのセキュリティ対策が求められます。本記事では、そのために知っておくべき導入時の注意点とともに、宣伝・販促用のファイルの管理や社外関係者への共有を、安全かつスムーズに行うためのクラウドストレージの選び方を紹介します。
目次
クラウドストレージとは
「クラウドストレージ」は、「インターネット上に用意されたデータの保管場所や、それを提供するサービス」を指します。「オンラインストレージ」とも呼ばれます。
社内LANに代表される、外部からアクセスできない閉鎖されたネットワーク上の自社サーバーにファイルを保管する従来の方法とは異なり、インターネットを介してどこからでもファイルにアクセスできるのが特徴です。ファイルの保管場所のURLをメンバーに伝えることで、ファイルを共有できるのです。
クラウドストレージは主に、以下の2つがあります。
① ファイルの保管・共有に必要なサーバーやソフトウエアなどのクラウド環境をサービス提供会社が設置・運用し、それを複数の組織や個人が共同で利用する「パブリッククラウドストレージ」(例:Google ドライブやMicrosoftのOneDriveなど)
② 特定の組織や個人が自分専用のクラウド環境を設置・運用する「プライベートクラウドストレージ」
一般的にクラウドストレージというと①を指すことが多いので、本記事では①のサービスを企業が導入する際、中でも広報・宣伝・販促などの部門が導入する際に役立つ情報を紹介します。
企業がクラウドストレージを導入する5つのメリット
企業がクラウドストレージを導入する主なメリットを5つ紹介します。
どこからでも自社ファイルにアクセスできる
一番のメリットは、インターネット環境さえあれば、どこからでも簡単に自社ファイルにアクセスできる点です。複数の人が複数拠点から一度にアクセスすることもできます。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも閲覧、ダウンロードができ、編集までできるサービスもあります。
外出先での業務はもちろん、リモートワークなど多様化するワークスタイルにマッチするファイル管理・共有方法として、クラウドストレージの利用が拡大しています。
社外の関係者とのファイル共有もスムーズ。PPAPに代わるセキュリティ対策にも
クラウドストレージでは、社外の相手にもアクセス権限を付与することで、ファイルを共有できます。クラウドストレージ上のアクセス権限を設定したフォルダなどにファイルをアップロードし、保管場所のURLをメールなどで伝えるだけで、相手はWebブラウザーなどを使って簡単にアクセスできます。重要度に応じてパスワードも付与すれば、安全性もアップします。
社外へのファイル共有にはメール添付がよく使われますが、メール添付では画像や動画などの大容量のファイルは送れないことが多くあり、そのたびにファイルの分割や圧縮をしたり、USBメモリやCD-ROMなどの物理媒体でデータを渡したりする必要がありました。その点、一般的なクラウドストレージでは大容量ファイルの共有もスムーズです。
また、メール添付によるファイル共有には、セキュリティ面でのリスクが伴います。クラウドストレージは、その回避につながる点も注目されているのです。
メール添付のリスクとしてまず挙げられるのが誤送信です。メールの誤送信は、企業による情報漏えい事故の要因の中で、起きた場合の影響が大変に大きいとされるものです。重要な情報を含むファイルが誤送信され、企業としての社会的信用が失墜するケースも実際に起きています。
クラウドストレージであれば、ファイルの保管場所のURLを誤送信してしまっても、そのURLを無効化すれば、第三者に見られることを防げます。
次に、メールには第三者による盗み見やデータ抜き取りのリスクもあります。
近年までは、重要なファイルは「パスワード付きZipファイル(暗号化Zipファイル)」にし、メールに添付して送る方法(PPAP※)がよく使われてきました。しかし、実はPPAPは盗み見を防げないばかりか、かえってセキュリティリスクを高めることが明らかになり、2020年以降は政府や大企業から使用廃止の動きが広がっています。クラウドストレージは、PPAPに代わる安全対策としても注目されているのです。
※「P:Password付きZip暗号化ファイルを送る」「P:Passwordを送る」「A:Angouka(暗号化)」「P:Protocol(プロトコル)」から取った造語。
共有先や案件ごとにアクセス領域を分けられ、業務効率がアップする
クラウドストレージでは、相手・案件ごとなどでフォルダに分け、ファイルをその1カ所にまとめて保管できます。そのため、ファイル群の共有状況の把握や、欲しいファイル、最新ファイルの特定がしやすいのがメリットです。
特にメール添付によるファイル共有では、過去メールをさかのぼることやメーラーで検索することになり、添付ファイル群の共有状況の把握や今使うべきファイルの特定がしづらくなります。共有したファイルを把握し、使うべきファイルを特定しやすくするため、添付ファイルをコピーし、ファイルサーバー上などにフォルダを作って整理して保管している方もいるでしょう。
クラウドストレージでは、整理用フォルダを用意しておけば、相手がはじめから該当フォルダにファイルを格納できるため、ファイル整理の手間を省けます。フォルダ内を確認するだけで、ファイルの共有状況や更新日時、バージョンなどを把握できます。
これに加え、一般的なクラウドストレージでは、ファイル名やドキュメントファイル内のテキスト検索ができるため、欲しいファイルが素早く見つかります。
また、ファイルを複数人で同時に編集できるものもあり、オンライン会議で話しながらファイルを共同で編集し、完成させるといったことも可能です。
自社でのシステム構築・運用に比べコスト削減が期待できる
クラウドストレージサービスを利用すれば、ファイルの保管・共有に必要なサーバーやソフトウエアなどを自社で購入し、システムを設計・構築する必要がありません。設備に関する初期投資、サーバーの設置スペース、メンテナンスやセキュリティ上の監視を自社で行う必要がなく、自社での運用に比べてコスト抑制が期待できます。
ストレージ容量の拡張が容易
ファイルを保存するストレージの容量を増やす際、自社内のファイルサーバーの場合は、ハードディスクやサーバー自体の増設が必要で、作業工数だけでなくコストの負担は大きなものとなります。その点クラウドストレージでは、そのような負担をなくしながら容量の変更を柔軟に行え、自社の利用規模に応じた運用が可能です。
企業がクラウドストレージを導入する際の注意点は?
クラウドストレージはこのように多くのメリットがありますが、導入する際の注意点にはどんなものがあるのでしょうか。ぜひ押さえておきましょう。
インターネット環境がないとアクセス、編集ができない
クラウドストレージは、インターネット環境がない、またはそれが不安定になった際にファイルへのアクセスや編集ができなくなります。インターネット環境が不確かな場所で業務を行う場合には、事前にファイルをダウンロードして、自分のパソコン内などローカル環境に保管しておくなどの対策が必要です。
サービスの選び方によっては、セキュリティリスク増大の可能性も?
クラウドストレージでは、セキュリティ対策が不十分なサービスがあり、導入前よりもリスクが高まることもあります。サービスレベル契約(SLA)を確認し、後に述べるサービスの選び方のセキュリティ面でのポイントをチェックしておきましょう。
特に、無料のクラウドストレージサービスを利用するということは、秘密保持契約を結んでいない会社にデータを預けるということを意味します。顧客情報や機密情報などを含むファイルを預けるのは避けた方がよいでしょう。
また、保管したファイルのURLやパスワードをメールで伝える際は、誤送信に注意しましょう。すぐに気づいてURLを無効化できればいいのですが、対応が遅れると第三者にアクセスされてしまう可能性があるため、送信前と後の宛先のチェックは必ず行います。URLやパスワードは、SMSやチャットなどメール以外のツールで共有することも検討し、保管にも留意しましょう。
パスワードの使い回しは避けた方がいいということはよく知られていますが、推測しやすいパスワードも不正アクセス原因となりかねません。パスワードは桁数と文字種が多いほど解析に時間がかかるといわれているので、少なくとも10桁以上とし、大文字・小文字の英数字、記号を組み合わせた強固なものにすることが推奨されています。
クラウドロックイン、ベンダーロックインの課題
最近では、ファイルの共有だけでなく、部門や自社全体の恒常的なファイル管理にクラウドストレージサービスを活用する企業も増えてきました。便利に利用できる一方で、指摘されている課題として、特定のサービスや特定の提供会社(ベンダー)のストレージからファイルを外に出しにくくなる「クラウドロックイン」「ベンダーロックイン」が挙げられます。
具体的には、ファイル管理を現在のクラウドストレージ環境から他の環境に移行したい場合や、別のシステムでもファイルを使いたい場合、ファイルの移行やダウンロードが必要になりますが、サービスによってはダウンロード課金があるため、データ量が増えるほど多額の費用がかかることがあるのです。また、無料サービスの利用時にはファイル移行のサポートが限られることが多く、自社で時間と手間をかけて移行対応をしなくてはならないことに注意が必要です。
ダウンロードやデータ移行については、事前にサービス提供会社に確認しておくのがいいでしょう。ロックインによる影響が大きいファイルがある場合は、同時に別の場所にも保管しておくなどの対策が必要です。
クラウドストレージが有効な職場は?
ここまで紹介したメリットと注意点を踏まえると、クラウドストレージの利用が有効なのはどのような職場でしょうか。
社外の人とファイルを共有する機会が多い、リモート環境での業務が多い
社外の人とデータを頻繁に共有する、共同で作業する必要がある職場には、クラウドストレージの活用は業務効率の向上につながりやすいといえます。特に画像、動画などの大容量ファイルのやりとりが多い広報・宣伝・販促部門などでは、大きなメリットが感じられるでしょう。
またもちろん、在宅や外出先など、リモート環境での業務が多い職場にも適しています。
大容量ファイルを保管・活用する、保管データ量が変動する
クラウドストレージは、低コストで容量を拡張できるので、大容量データを日常的に管理・活用する職場、保管容量が増える傾向がある職場に適しているといえます。容量を柔軟に変えることが可能なため、周期的にデータ量が大きく変動する、または使うデータ量が予測しづらいといった場合にも使いやすいでしょう。
広報・宣伝・販促部門に適したクラウドストレージの選び方は?
さまざまなクラウドストレージから、企業、特に広報・宣伝・販促部門に適したサービスを選ぶためのポイントを解説します。
画像・動画などファイル共有の使いやすさ
クラウドストレージのサービスそのものが使いづらいと、社内で浸透せず、業務効率化につながりません。利用する従業員はもちろん、社外メンバーも使う場合には、初めての人でも分かりやすく使いやすいことが大切です。直感的な操作ができるか、見やすい画面かどうかを確認します。
特に、広報・宣伝・販促部門では、画像や動画、ロゴなどのファイルを多用します。例えばプロモーション用の制作物は、会社や商品の統一したブランドイメージに沿った制作が必要です。そのために製品画像やロゴなどの公式素材、権利により使用範囲が限定された素材・コンテンツなどの保管場所や使用ルールを分かりやすくし、ブランドガイドライン資料や知的財産権・肖像権に関する資料などと合わせて、関係者に共有することが大切です。そのため、これらを保管するクラウドストレージの使いやすさ、画面表示の分かりやすさが重要になります。
また、最近では、多くのクラウドストレージが10MB以上の大容量ファイルもスムーズにアップロード、ダウンロードできますが、サービスによって環境が異なるため、一度に送れる容量の制限がある場合があります。画像や動画の管理に特化したクラウドストレージなら大容量ファイルでもストレスなく共有できるでしょう。
ストレージ容量
これまでに保管、共有してきたファイルの容量から、必要となるストレージの容量を予測し、運用計画を立てましょう。使用容量に大きな変動が見込まれる場合は、柔軟に契約容量の変更ができるサービスを選ぶことで、運用に見合ったコストで利用できます。
また、利用人数(ID数)が課金対象となるサービスも多くあります。サービスを比較検討する際の費用算出で併せて確認しましょう。
検索性
多くのクラウドストレージサービスが、ExcelやWordなどのドキュメントファイルの全文検索に対応しており、便利に使えます。しかし、画像や動画などは全文検索が使えないため、ファイル名でしか検索できない場合が少なくありません。
画像や動画などを多く使用する広報・宣伝・販促部門では、これらのファイルの検索性が業務スピードを左右する部分も多いので、ファイルに紐づくメタ情報(属性情報)による検索、類似画像検索など、検索効率を大幅に高める機能があるかどうかも、選ぶ際のポイントになります。ファイルのサムネイルを自動で生成する機能があれば、ファイルの中身が一目で分かり、さらに検索性がアップします。また、PDF中の文字を認識し、テキストデータを抽出するOCR(Optical Character Recognition)機能に対応しているクラウドストレージもあります。
セキュリティ
発売前の新製品情報などの重要なファイルを扱い、社内外のステークホルダーとの接点も多い広報・宣伝・販促部門にとって、ファイルを共有するクラウドストレージのセキュリティ対策は非常に重要です。例えば、情報漏えいを防ぐために、一定期間経過後のファイル自動削除機能やURLの無効化機能、アップロード・ダウンロード通信の暗号化、登録データのウイルスチェック、保管データの暗号化などに対応しているものを選びましょう。
ファイルの内容や共有する相手によって、閲覧のみ・ダウンロード可・編集可などのアクセス権限の設定がどこまで細かくできるのか、詳細なアクセスログがとれるかどうかも重要です。
サービス継続性や実績
クラウドストレージは民間企業が運営するものなので、事業継承せずにサービスが終了となる場合もあり得ます。サービス提供会社の財務安定性やガバナンス体制などを確認して選ぶこともポイントになります。また、これまでにどんな企業が導入しているのか、導入数、提供年数などの実績もチェックするとよいでしょう。
第三者機関の認証による品質保証
第三者機関によって客観的な品質保証がされているかを確認することも大きなポイントです。クラウドストレージサービスを認証する第三者機関の制度としては、特定非営利活動法人 ASP・SaaS・IoT クラウド コンソーシアムが認定する「ASP・SaaS 安全・信頼性に係る情報開示認定制度」や、財団法人日本品質保証機構(JQA)が、個人情報だけでなく組織が保有する情報すべてのリスク管理を行い、情報に対するさまざまなリスクを低減・回避・予防することを目的として認証する「ISO27001」などが挙げられます。
画像・動画共有の効率を大幅アップ!導入実績多数のコンテンツ管理システム「IMAGE WORKS」
富士フイルムの「IMAGE WORKS(イメージワークス)」は、画像や動画などの一元管理・共有に特化したコンテンツ管理システムです。広報・宣伝・販促部門向けのコンテンツデータベースを、クラウド上に短期間で構築できます。2,000サイト以上※の導入実績を持ち、安全かつ使いやすい直感的な操作性で、多くの企業様にご支持をいただいています。
検索機能は4種類あり(キーワード検索、絞り込み検索、類似画像検索、文書内検索)、用途に応じて検索が行えるのが特長です。中でも絞り込み検索は、100項目以上設定できる属性情報に登録した情報を基に検索条件を絞り込んでいけるので、膨大なファイルの中からでも欲しいファイルをすぐに見つけられます。IllustratorやInDesignで作った素材も含め、ファイルのサムネイルを自動生成し、中身も一目でわかります。
また、一定期間経過後のファイル自動削除機能やURLの無効化、ファイル暗号化、強固なパスワードの自動生成をはじめ、ファイル・フォルダ単位での細かいアクセス権限の設定など、情報漏えいリスクを回避するセキュリティ対策が充実。さらには災害やサイバー攻撃などさまざまな脅威に対抗するリスク対策や遠隔地でのバックアップなど、万全の対策を行っています。各種ログの記録やファイルダウンロードの申請・承認機能も備えており、企業としてのガバナンス強化も行えます。
「コンテンツを資産として安全かつ効率的に管理したい」「コンテンツの適切な利活用を社内外で促進したい」という企業の皆様を「IMAGE WORKS」がサポートします。また、カスタマーサクセスチームが運用支援や作業代行も承ります。ご興味のある企業はぜひお問い合わせください。
※姉妹サービスを含む