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業界注目の技術情報

フロープロセスの歴史と工業化動向(その1)

バッチ法とフロー法

ここ数十年、有機合成反応は目覚ましい進歩を遂げた。各種触媒や試薬の開発により、以前なら思いもよらなかったような構造変換が実現し、複雑な天然物が驚くほど短工程で合成できるようになった。

一方で、合成反応を行なうプロセスに関しては、有機化学の黎明期から基本的に変わりがないといえる。溶媒に基質と試薬を溶かし、フラスコ内で撹拌して反応を行ない、抽出・精製を行なって生成物を得る「バッチ法」が、長年主流の座を占めている。実験室レベルでは、バッチ法は簡単な装置で行える上に、途中での精製なども容易だ。このためバッチ法は大きく進展し、これまでの合成化学を支えてきた。

一方、大型化学プラントなどでは、「フロー法」が主流となってきた。管状の反応容器の入り口から原料を送り込んで、出口から生成物を取り出す操作を連続的に行なうものだ。ハーバー=ボッシュ法によるアンモニア合成など、多くの化学プラントがこのシステムを採用している。

マイクロフロー法の登場

しかし近年、実験室レベルの合成においても「マイクロフロー法」による合成法が登場し、注目を集めている。これまでのフロー法と異なり、多くの場合内径1mm以下、容量1ml以下の管状反応容器に化合物溶液を流し、その内部で反応を行なうものだ。

反応の形式としては、大きく2つに分けられる。ひとつは、管中で2種類の化合物溶液を混合させて反応を行なう形式である。もうひとつは、管内に試薬または触媒を担持させた高分子担体を詰めておき、化合物溶液をここに流して反応させるものである。高分子担体の形式として、ビーズを詰めるもの、膜状の触媒を用いるものなどが工夫されている。

マイクロフロー法の特徴を列挙すると、以下のようになる。

(1) 流速及び流路の長さによって、反応時間のコントロールが可能

(2) 熱を逃がすことが容易

(3) 反応が連続して行われるため、不安定な中間体を次の段階に使いやすい

(4) スケールアップが容易

(5) 実験装置のコンパクト化が可能

(6) 自動化も可能

これらについて、以下詳しく解説する。

(1) フロー合成において反応は、管の一方から原料が導入され、管のもう一方から出て行くまでの間に起こる。このため流速や流路の長さを変えることで、細かく反応時間の調節が可能になる。バッチ法では生成物が長時間にわたって反応条件にさらされるため、分解の危険を伴う。しかしフロー法では、生成物は素早く系外に放出されるため、比較的不安定な化合物でも安全に合成が可能である。

(2) 従来のフラスコは球形に近い形であるため、表面積が小さく熱が逃げにくい。特に大スケールの反応では、反応熱によって内部温度が上昇し、暴走などの危険を伴う。これに対してマイクロフロー法では、容器が極めて細長いために反応液の体積に対する表面積が大きく、素早く熱を逃がすことができる。このため、ニトロ化など高温では危険を伴う反応を、安全に行なうことができる。

(3) 上記2項目で述べた特徴を利用すると、不安定な合成中間体を発生させ、素早く次の試薬を加えることで、迅速かつ高効率な反応が可能になる。たとえばSwern酸化は、ジメチルスルホキシド(DMSO)と塩化オキサリルから発生する活性中間体が不安定であるため、通常-50℃以下の極低温で反応が行われる。しかしフロー合成を用い、発生した活性な中間体に素早くアルコールを混合することで、室温にて酸化を行うことが可能になった。

DMSOと塩化オキサリルから生じる不安定な中間体2に、素早くアルコール3と塩基を加えることで、分解を防いで収率よく目的物が得られる。

(4) (2)で述べた通り、バッチ法においては反応のスケールを大きくすると熱が逃げにくくなり、反応の暴走など思わぬ失敗につながる。このため、同じ反応でも大スケール化の際には、詳細な条件の検討が必要となる。

しかしフロー合成においてはこの問題がないため、スケールに応じて反応条件を変える必要がない。単に反応装置の稼働時間を長くするだけで、目的とする化合物を多量に合成することができる。たとえば1ml程度の容量のマイクロリアクターでも、丸一日反応を続けることで、グラム単位の生成物を得ることも可能である。

[写真]アメリカのローレンス・リバモア国立研究所で開発されたマイクロリアクター(Wikipedia「マイクロリアクター」より)

アメリカのローレンス・リバモア国立研究所で開発された
マイクロリアクター(Wikipedia「マイクロリアクター」より)

(5) 微細加工技術の発達により、精密な形状のマイクロリアクターが、極めてコンパクトに作れるようになっている。手のひらに乗るサイズのマイクロリアクターと、全体でも15kg以下に収まる制御システムがすでに市販されている。


(6)フロー法においては、一度溶液を流し始めれば、目的物が生成するまで実験者が手を加える必要はない。システムの組み方次第で、全自動化も可能になる。

一方、フロー法には問題点もある。たとえば固体を用いる、あるいは固体が生成する反応では、管が目詰まりを起こしてしまう危険がある。こうなれば全体が停止してしまうため、実用上最も大きな難点となっている。


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本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しております。

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