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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.15

メリハリをつけ、ビジュアルを追加してさらに分かりやすく!
伝わる「図解」の大原則(2)

時短を実現! 図解を効率化する3つのポイント

前回は、人を動かす一人歩きする資料作りに欠かせない図解を使いこなす要点として、「図解の型を選ぶ」方法を紹介しました。今回は「情報を図解化する」方法について説明します。

図解化するときには、多くの図形やテキストボックスを組み合わせるため、作業に時間がかかりがちです。しかし、適切なポイントを理解して作業を進めれば、効率的に図表を作成できるようになります。

まずプレゼンテーションソフトで図表を作り始める前に、ノートに下書きをしてみましょう。その後、「1 図形のまとまりを作る」「2 図形の配置を整える」「3 文字を入力する」の3つのポイントを押さえて作成していきます。これをベースに応用していけば、作業の効率化が図れるでしょう。

ポイント1 図形のまとまりを作る
図形の大きさがそろわなかったり、位置が不ぞろいになったりして、なかなかきれいな図表を作れない、ということはありませんか。これは図形を1つずつ作っていることが原因です。最初に図解に必要なパーツとなる図形の「まとまり」を1つ作ると、効率的に作業を進められます。プレゼンテーションソフトを使って、次の方法で作成してみましょう。

例えば、列挙型であれば「図形」から「正方形/長方形」を選び、小見出し用の図形と文章入力用の図形の2つを作成し、書式やフォントを設定後、2つの図形をグループ化します。フロー型であれば、小見出し用に「矢印:五方向」、文章入力用に「正方形/長方形」の図形を作成し、書式などを設定後、グループ化するといった具合です。このように、作成したい図表に合わせて適切な図形を選び、まとまりを1つ作りましょう。

ポイント2 図形の配置を整える
ポイント1で作成した「図形のまとまり」を配置していきます。コピー&ペーストを繰り返してスライド上に「図形のまとまり」を必要な数まで増やした後、整列機能を使って均等に並べ、左端や上端に図形をそろえます。

ポイント3 文字を入力する
文字は必ず箇条書きで入力します。伝えたいことを明確にし、読み手の負担を減らすためです。図表を作成するときのコツは、最初に図形のみでスライドの全体構成を作ってから、最後にまとめて文字を入力することです。

図表作成3つのポイントの例

資料の決め手はアクセントカラー。適切な強調色は「色相環」で選ぶ!

適切な図解の型を選択し、きれいに作成できるようになると、スライドの内容は格段に分かりやすくなりますが、読み手にとって、図表の内容をすべて読み込むのは大きな負担になります。そこで、特に伝えたいポイントを強調して、読む量を減らす作業を行います。プロセスは次の3つです。

1.強調色を選ぶ
強調色に「赤」を使っている資料をよく見かけますが、赤は必ずしも強調色に適しているとは言えません。適切な強調色を選ぶポイントは、本連載vol.12でも紹介した色相環(しきそうかん)です。

色相環で見たときに、スライドの基本色であるベースカラーの反対にある色はアクセントカラーと呼ばれ、強調色として使うことができます。色の主張が強くない黄色や黄緑などは、強調色に向いていないため、橙や緑など同系の色を選択しましょう。

色相環とベースカラー・アクセントカラーの例

2.スライドメッセージの内容から強調する部分を決める
スライドの強調部分を決めるには、本連載vol.5で解説したスライドメッセージに沿うことが重要です。読み手がスライドメッセージを読まなくても、図表で強調された部分を見るだけで、資料で主張したいメッセージを理解できるようにしましょう。

3.文字、見出し、範囲で強調する
スライドメッセージで主張している部分を強調するには、「文字の強調」「見出しの強調」「範囲の強調」の3つの方法があります。これらは単独で使うこともあれば、下の図のように組み合わせて使うこともあります。

(1)文字の強調
文字が多い場合は読みやすくなるよう、文章中の重要なポイントを明確にすることが大切です。文字を強調するには、文章中の大事な部分の文字色をベースカラーに変更し、特に重要な部分は強調色(アクセントカラー)に変更します。また、フォントサイズを大きくするのも有効です。

(2)見出しの強調
小見出しを強調する場合は、文字に色を付けたり太字にしたりするのではなく、小見出しの図形をアクセントカラーにすると効果的です。

なお、小見出しの図形の色によっては、黒い文字が見えにくくなることもあります。その場合は文字色を白に変えましょう。また、小見出しの図形の色を強調する場合は、多くても3カ所くらいまでにします。強調箇所が多すぎると、本当に強調したい部分が不明瞭になり、読み手が混乱してしまうからです。

(3)範囲の強調
範囲を強調するときは、四角や楕円で囲むのではなく、背景色を下に敷くことで、よりシンプルに見やすくなります。

文字、見出し、範囲の3種類で強調した例

ビジュアル要素をプラスし、読み手の理解がより早まる資料に!

ここまで紹介した通り、適切な図解の型を選び、強調を加えることで資料はかなり分かりやすいものになります。しかし、図解とはあくまでも文字情報を視覚的に整理したものです。そのため読み手は、最終的に文字を読んで、内容を理解することが求められます。

繰り返しになりますが、文字を読むことは読み手にとってはかなりの負担です。そこで、読み手の理解を促すために活用したいのが、「クリップアート」などのビジュアル要素を使って、図解を補助する方法です。

例1:〇×△や5段階などの評価を追加する
読み手が文字を読まなくても概要を理解できるよう、〇×△や5段階などの評価を追加することで、スライド情報を補助することができます。なお、評価は必ず一定の基準に基づいて決めるようにしましょう。

図解に評価を加えた例

例2:図解の内容をクリップアートでビジュアル化する
図解に画像やイラスト、アイコンなどのクリップアートを追加すると、内容が視覚的に表現されるため、何を示しているか一目で読み取ることができます。分かりやすさを意識して、適切なクリップアートを選択しましょう。

クリップアートの画風がそろわなくて悩ましい場合におすすめなのが、さまざまな概念や図を単色のシンプルな図形で表現したイラスト「ピクトグラム」です。金融業界など堅めの業界や社外向けのフォーマルな資料で、ピクトグラムの利用がそぐわないときには、人物などをシルエット化したイラストを使うのもよいでしょう。

クリップアートを加えた例

前回と今回で、「読み手が見た瞬間に内容を把握できる」「感覚的に論理を理解できる」という絶大な効果のある図解の基本や上手な使い方について紹介しました。文字を適切に強調したり、クリップアートを使ったりすることで、より分かりやすく、伝わりやすい一人歩きする資料が作れるので、試してみてください。

次回は「グラフ」について紹介します。グラフの選び方や見せ方に頭を悩ませた経験がある方は多いのではないでしょうか。これにもルールがあり、習得すれば資料が劇的に分かりやすく変身するでしょう。グラフの正しい選び方や見せ方について詳しく解説していきます。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2023年3月