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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.18

資料の流れを整理し、統一感を持たせる!
人を動かす「一人歩きする資料」の仕上げ方とは。

「資料の流れは分かりやすい?」「統一感はある?」事前にチェックを

ここまで、一人歩きする資料作りに大切な考え方や必要なテクニックについて、紹介してきました。最後は、いよいよ一人歩きする資料の総仕上げです。全体の流れを整理し、統一感を出す方法について説明します。

プレゼンテーションソフトで作成する資料は、基本的にスライドを1枚1枚めくって読んでいく紙芝居のようなものです。読み手にとっては、スライド間のつながりが見えにくくなるという欠点があります。

そこで大切になるのが、「流れを分かりやすくする」「全体の統一感を出す」といった工夫を施し、資料全体の流れや情報のつながりを分かりやすく整理することです。

ちょっとした一手間を加えるだけで、資料は劇的に分かりやすくなります。資料の流れを示し、資料全体の統一感を出すコツについて順番に見ていきましょう。

全体像とつながりを示すことで、資料の流れは分かりやすくなる

資料の量が多くなると、読み手は全体の中のどの部分を読んでいるのか、あるいは今読んでいるスライドがどのスライドと関連しているのか、分からなくなることがあります。資料の流れを整理することで、読み手は資料を理解しやすくなります。まずは「資料の流れ」を分かりやすく整理していく方法から見ていきましょう。

(1)セクションごとに「目次スライド」を挟む
本連載vol.10でも紹介しましたが、資料全体の流れを示すのに効果的なのが、各セクションの冒頭に目次を挿入する方法です。セクションは、本でいう章に当たるもので、複数枚のスライドで構成されます。資料の冒頭だけでなく、各セクションの冒頭にも目次スライドを挟むことで、読み手は自分が今どこを読んでいるのかを資料の途中で確認し、頭の中を整理することができます。

このとき、次の図のように、これから説明するセクションのタイトルを背景色で強調します。該当するセクションのタイトルだけでなく、他のタイトルも同時に見せることで、全体の中でどの部分を読んでいて、それがどのような役割を果たしているのかが一目瞭然になります。

セクションごとに目次スライドを挟んだ例

(2)全体の流れを「パンくずリスト」で示す
「パンくずリスト」とは、今見ているスライドが、資料全体の中でどの位置にあるのかを示すものです。読み手は、全体の中での位置付けを容易に把握できるようになります。

パンくずリストを使う場合は、冒頭のスライドでリストの全体像を示した上で、以降のスライドの右上に、現在の位置を示すパンくずリストを掲載します。

パンくずリストを使用した例

(3)スライド間で「色と順番」を統一する
プレゼンテーションソフトで資料を作る際には、スライド間のつながりを意識しないと、スライドごとに異なる色を使ってしまったり、グラフのデータや小見出しの順番がバラバラになったりするものです。色や要素の順番を統一し、スライド間の流れを整えましょう。

・色をそろえる
例えば、複数のスライド間で、共通の地域・企業などのデータを示す際には、同じ色を使うようにします。色をそろえることで、どの地域の何のデータを示しているのか、理解しやすくなります。

色をそろえた例

小見出しの場合も、図形の色をそろえることでスライド間での関係が分かりやすくなります。

・順番をそろえる
複数のスライド間で、要素の順番を変えるのは避けましょう。例えば、日本事業・北米事業・欧州事業を説明する資料の場合、あるスライドで「日本→北米→欧州」の順番に並べたとしたら、次のスライドでも必ず同様に並べます。

スライド間で要素の順番をそろえるだけで、読み手は次に何が来るかを予測することができるため、読み手の負担を減らすことができます。

小見出しの場合も同様で、小見出しの順番をスライド間でそろえると、対応関係が明確になります。

順番をそろえた例

(4)スライド間で「小見出しを重複」させる
本連載vol.4で説明したように、一人歩きする資料の構成は、「背景→課題→解決策→効果」の順番がおすすめです。しかし、複数の課題を扱う場合、読み手は資料を読んでいるうちに、どの課題にどの解決策が対応するか、つながりが分からなくなってしまうことがあります。

プレゼンなら言葉で補足できますが、一人歩きする資料の場合は、説明がなくてもスライドのみで相手に対応関係をうまく伝える必要があります。そこで、対応する解決策のスライドで、課題の小見出しを再度見せることで、課題と解決策の対応関係を明確にすることができます。

スライド間で小見出しを対応させた例

資料の中の不整合を修正し、資料全体の統一感を出す

資料を作成していると、あらかじめ決めておいたルールを守ろうとしても、スライド間でフォントや図形の書式、言葉の使い方などが異なるという事態がどうしても起こってしまうものです。資料作成の最後に、資料の中にある不整合を修正して、統一感のある資料に仕上げましょう。人力に頼り過ぎず、できるだけプレゼンテーションソフトの便利な機能を使って、不整合の修正を行うのがおすすめです。

(1)「一括置換」でフォントを統一する
資料作成にあたって、使用するフォントのルールを決めてはいても(本連載vol.11参照)、一つの資料を複数人で作り、統合した場合など、さまざまな理由によってフォントがそろわないことがあります。スライド間でフォントがそろっていないと、読み手は無意識のうちに違和感を覚え、資料に対する印象が悪くなってしまうため、そろえるようにしましょう。一つひとつのフォントを確認する必要はなく、プレゼンテーションソフトの一括置換機能を使うことで、簡単にそろえることができます。

(2)「置換機能」で文章表現を統一する
資料作成の間に、スライド内もしくはスライド間で、文章表現の不統一が起こってしまうこともあります。例えば、最初は「A事業改革プロジェクト」だったのが、途中で「A事業改革P」と省略してしまうといった場合です。また、単語レベルの不統一で「webサイト」「ウェブサイト」「WEBサイト」などの混在も起こりがちです。

すべて確認するのが困難な場合は、不統一が見られそうな単語やよく使われている単語のみ、置換機能で確認・修正しましょう。

(3)「図形の変更」で図形を統一する
資料の中で、図形の形は必ずそろえるようにしましょう。あるスライドでは「消費者」を楕円形で表現していたのに、他のスライドでは四角形で示す、といったように、同じ言葉に違う図形を当てはめてしまうと、読み手が混乱してしまいます。

こうした図形の不整合では、一つずつ図形を削除して新たに挿入する必要はなく、プレゼンテーションソフトの図形の変更機能を使います。複数の図形を一括変更することはできませんが、形を変えたい図形を一つずつ変更できます。

これまでの記事で、一人歩きする資料のルール設定について説明してきましたが、ルールに沿って作成しているつもりでも、うっかり異なるフォントや図形、色を使ってしまっていたり、過去に作った資料や複数人の資料を統合した際に、そろっていない箇所があったりするものです。ここまでの努力を無駄にしないためにも、資料の流れを整理して、必要な箇所が統一されているか最終確認を忘れずに行いましょう。

本連載は今回が最終回です。説明資料を作成するスキルは、業種にかかわらず求められる能力です。口頭による説明がなくとも、読み手がスラスラ読んで内容を理解してしまう説明資料を作成する力は、ビジネスパーソンにとって大きなアドバンテージになるでしょう。

これまで紹介してきた、人を動かす「一人歩きする資料」の作り方をぜひマスターして、さまざまなビジネスシーンで役立ててください。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2023年8月