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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.10

スケルトン作りの大原則(2)
一人歩きする資料の要となる
「タイトル」「サマリー」「目次」「結論」の作り方とは?

「アウトライン機能」を使って、効率よくスムーズにストーリーを反映!

前回は、「スケルトン作り」のうち、全てのスライドに共通の設定を行う方法やコツを説明しました。今回は、ステップ2「スライドタイトルとスライドメッセージ」の落とし込み方、ステップ3「タイトル、サマリー、目次、結論」の作り方を解説します。

本連載vol.5で解説したスライドタイトルとスライドメッセージという形で決めたストーリーをスライドに落とし込んでいきましょう。そこでおすすめしたいのが、パワーポイントの「アウトライン機能」を使う次の方法です。

1.ワードにストーリーを記入する
まず、表計算ソフトやノートにまとめたスライドタイトルとスライドメッセージをワードに貼り付け、あるいは入力します。その際、スライドタイトルとスライドメッセージはそれぞれ改行して行を分けます。

次に、ワードの「テキストの追加」コマンドを利用します。スライドタイトルのテキストを選択し、「参考資料」タブの「テキストの追加」から、スライドタイトルを「レベル1」に、スライドメッセージを「レベル2」にそれぞれ設定します。

最後にフォントを、パワーポイントで使用するフォントに変更して、ファイルを保存します。

ストーリーをワードに記入する手順

2.ワードで作成したファイルをパワーポイントで開く
パワーポイントの「ホーム」タブ→「新しいスライド」(下の部分をクリック)→「アウトラインからスライド」を選択し、1で保存したワードファイルを選びます。これで、スライドにスライドタイトルとスライドメッセージが挿入されます。

ウィンドウ左側にあるサムネイルでスライドを選んで右クリックし、「レイアウト」から「タイトルとコンテンツ」(本連載vol.9で設定した「コンテンツスライド」)に変更します。タイトルのスライドも、同様の方法で「タイトルスライド」を適用しましょう。

パワーポイントでストーリーを落とし込んだ例

ここで「表示」タブから「アウトライン表示」を選択すると、次のような画面が表示されます。全体のストーリーを再度確認する際に役立ちます。

アウトライン表示の例

何を盛り込めば効果的? 一人歩きする資料に不可欠な4つの要素

スライドタイトルとスライドメッセージをスライドに落とし込んだことで、スケルトンの全体像が見えてきました。「スケルトン作り」のステップ3では、資料構成の要となる「タイトル」「サマリー」「目次」「結論」の4つのスライドを作成していきます。

スライドの構成例

(1)タイトル(表紙)
タイトルは、資料を読むべきかどうかが瞬時に分かる具体的な見出しをつけましょう。タイトルのスライドには、バージョン・日付などを入れ、新旧の資料の見分けがつくようにするほか、作成者などの情報も入れます。

(2)サマリー
サマリーのスライドは、資料の内容を簡潔にまとめます。この1枚を読むだけで、資料の全体像が理解できるような内容を目指しましょう。「サマリー」がない資料をよく見かけますが、欠かせないものと心得ましょう。

(3)目次
目次のスライドでは、資料を構成する要素、展開する順番をまとめます。

(4)結論
結論のスライドには、資料全体のまとめと、自身が取り組む行動、相手に取り組んでほしい次の行動を具体的に示します。資料全体の内容を振り返ることで、内容の理解と次の具体的な行動を促します。


この4つのスライドは、他の人との情報共有の際にも重要な要素となります。もし、上司の確認が必要な資料の場合は、この4つのスライドが完成した時点で一度確認を取るといいでしょう。

この時点で構成や結論に対するフィードバックをもらうことで、早い段階での修正が可能になるため、後になってから大幅な作り直しを避けることができるでしょう。

資料の第一印象を決める「タイトル」「目次」スライド作成の基本ポイント

4つの中から、まず「タイトル」と「目次」のスライドを作成していきます。

1.タイトルスライドの作り方
タイトルスライドを選択し、資料のタイトル、企業ロゴ、資料のバージョン、日付、作成者を入力します。次の図のように設定しましょう。

タイトルスライドの設定例

また、会社にプロジェクト情報や部署情報を示すルールがあれば左下部分に追加し、部外秘や社外秘などの書類管理情報がある場合は、その横に記載するとよいでしょう。

資料のバージョンは、目立つようタイトルの右上に配置し、管理しやすいようにします。

2.目次スライドの作り方
目次スライドは、「タイトルとコンテンツ」レイアウト(前回設定した「コンテンツスライド」のこと)を使って、次の図のように設定します。

目次スライドの設定例

ページ数が多くなるときは、スライドの冒頭だけでなく、章の切れ目に区切りとして目次ページを挿入するのも有効です。読者が全体の中でどの部分を読んでいるのかが、分かりやすくなります。その場合、全体の中での現在位置を示すため、次の図のようにラインを設定し、強調するようにします。

目次スライドで現在の位置を示した例

人を動かす資料の基本となる「サマリー」「結論」スライドの作り方

次に、「サマリー」と「結論」のスライドを箇条書きで作ります。見た目はシンプルになりますが、この2つのページには「過去と現在(サマリー)」「現在と未来(結論)」をつなぐ重要な役割があるのです。

3.サマリースライドの作り方
サマリースライドも、「タイトルとコンテンツ」レイアウト(前回設定した「コンテンツスライド」のこと)を使って作成します。

過去と現在をつなぐ役割を持つサマリーには、資料を作るに至った経緯(過去)と、資料の要約(現在)を記載します。こうした内容を記すことで、資料の位置付けや概要が明確になり、読み手はサマリーに目を通せば、この資料を読むべきかどうか判断できます。

提案書や企画書を検討する立場の人は忙しい人が多いため、サマリーで資料の概要を把握できる方が助かるでしょう。最初に資料の結論を見せてしまうことに抵抗がある人もいるかもしれませんが、サマリーは資料を短時間で理解してもらうためのものです。一人歩きする資料では結論を最初に示すようにしましょう。

サマリースライドの例

4.結論スライドの作り方
結論スライドも、「タイトルとコンテンツ」レイアウト(前回設定した「コンテンツスライド」のこと)を使って作成します。

現在と未来をまとめる役割を持つ結論スライドには、資料内容の要約(現在)と、今後のアクション(未来)を記載します。資料内容の要約部分は、サマリースライドとほぼ同じと考えていいでしょう。

一人歩きする資料の目的は、「人を動かす」ことです。結論スライドで提示するアクションは、最も重要なものになると心得ておきましょう。必ず、「相手に期待するアクション」と「自分のアクション」を具体的に明記するようにします。

結論スライドの例

これで一人歩きする資料の骨格となる「スケルトン」が完成しました。次は、本連載vol.6vol.7vol.8で解説したスライド情報を、スケルトンに反映していく作業になります。

ですがその前に、忙しいビジネスパーソンの皆さんには、効率的にスライド作成を進めるための“ルール作り”をおすすめします。「ルール作りなんて面倒だ!」と思うかもしれませんが、部署内、会社全体でルールを設定することで、自分自身が作成した資料の活用だけでなく、共有や統合作業がグッとラクになり、作業時間の軽減にもつながります。

そこで次回は、スライド作成の基本となる「レイアウト」「文字」「矢印」「図形」「配色」のルール設定について解説します。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2022年8月