社員名簿とは? 記載項目・保存期間・取り扱いの注意点など

社員名簿とは? 記載項目・保存期間・
取り扱いの注意点など

社員名簿は企業にとって欠かせない帳簿の一つです。法律によって作成と保存が義務付けられており、企業は必ず作成する必要があります。それでは、社員名簿がなぜ必要なのか、法律上どのように扱う必要があるのかなどはご存知でしょうか。労働基準法に違反しないためにも、社員名簿の取り扱いはしっかりと理解しておくことが重要です。

社員名簿とは? 記載項目・保存期間・取り扱いの注意点など

今回はそんな社員名簿について、目的や役割、記載項目や保存期間・管理方法、取り扱い方などについて解説します。

社員名簿とは

はじめに、社員名簿の基礎知識として、社員名簿の定義と目的、法的要件と役割について解説します。

社員名簿の定義と目的は?

社員名簿は労働基準法によって作成・保存が義務付けられた法定三帳簿の一つです。労働基準法上は「労働者名簿」ですが、社員名簿や社員台帳、従業員名簿などとも呼ばれています。

社員名簿は労働者の情報を記録する書類であり、従業員の氏名や生年月日、履歴などが記載された書類です。より詳しい項目については後ほど解説します。労働基準法で定められた書類であり、作成は必須です。加えて、従業員一人ひとりの情報を把握するためにも必要といえます。

社員名簿の目的は、事業者が雇用する従業員をしっかりと管理し、必要に応じて情報を提供できる状態を保つことにあります。

法的要件と企業における役割

前述のとおり、社員名簿(労働者名簿)は「賃金台帳」「出勤簿」とならぶ法定三帳簿の一つです。事業者は雇用する労働者に関連する情報を管理する義務があり、そのために法定三帳簿は欠かせません。

社員名簿の対象は、日雇い労働者以外のすべての従業員です。ただし、派遣社員の場合は雇用契約が異なるため対象外になります。社員名簿は企業が従業員の情報を管理するために欠かせない書類です。

社員名簿には人事や労務の業務に欠かせない情報が記載されているため、業務遂行のためにも必要になります。また、労働基準監督署や年金事務所、ハローワークなどの行政調査の際に提出が求められることがあります。

社員名簿の記載項目

社員名簿の記載項目は労働基準法で定められています。必須項目以外にも、記載しておくと従業員の情報を管理する際に役立つ項目もあるため、併せてみていきましょう。

法的に義務づけられている項目

法的に記載が義務付けられている項目は、次の9つの項目です。

  1. 氏名
  2. 生年月日
  3. 履歴
  4. 性別
  5. 住所
  6. 従事する業務の種類
  7. 雇入れ年月日
  8. 退職年月日と事由
  9. 死亡年月日と事由

これらの項目がない社員名簿は、不備があるとして労働基準法違反になります。ただし、様式は定められておらず、項目として存在していれば問題ありません。

履歴は最終学歴や職歴だけでなく、各従業員の部署異動や昇格などの履歴も記載します。

従事する業務の種類は、従業員がどのような仕事をしているのかを記載する項目です。なお、30人未満の事業場では記載する必要がありません。

雇入れ年月日は実際に雇用を開始した日時を記載します。これは、勤続年数や年次有給発生日の計算でも利用するため重要です。

退職年月日と死亡年月日については、日付だけでなくその理由や原因も併せて記載します。ただし、従業員都合で退職した場合は、理由を記載する必要はありません。

必須項目以外の項目

前述の必須項目以外にも、次のような項目を入れておくと管理する際に役立ちます。

  • 社員コード(社員番号)
  • 役職
  • 所属部署
  • 顔写真
  • 家族構成(扶養家族)
  • 健康保険、基礎年金、雇用保険番号など

従業員一人ひとりを適切に管理するためにも、これらの情報も併せて記載することをおすすめします。より効率的に管理したい場合は、ITシステムの導入もおすすめです。

社員名簿の保存期間と管理方法

社員名簿は作成するだけでなく、保存も義務付けられています。法的に定められた保存期間と併せて、効率的に管理する方法を解説します。

法的に決められた保存期間

社員名簿の保存期間は、退職・解雇・死亡日から起算して3年間です。「入社日から3年間」と勘違いしやすいため注意しましょう。労働基準法では、第百九条・第百四十三条に次のように記載されています。

【第百九条】
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

【第百四十三条】
第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

引用元:労働基準法(e-Gov)

このことから、現在は社員名簿の保存期間は3年間と捉えることができます。しかし、今後5年間に延長される可能性がある点は覚えておきましょう。

また、名簿の形式については法律で定められておらず、紙でもデータでも問題ありません。ただし、データとして保存する場合は、次の要件を満たしておかなければなりません。

  • 法令で定められた要件を具備し、かつそれを画面上に表示し印字できること。
  • 労働基準監督官の臨検時等、直ちに必要事項が明らかにされ、提出し得るシステムとなっていること。誤って消去されないこと。
  • 長期にわたって保存できることなど。

出典:労働基準法に関するQ&A(厚生労働省)

また、退職者については行政機関から問い合わせがくることがあるため、社員名簿とは別に管理する方法もあります。

効率的に名簿を管理する方法

社員名簿は随時情報を更新する必要があるため、データ化して管理したほうが効率的です。加えて、保存期間も法律で定められており、必要に応じて印刷・提出が必要になることからも、データ化は必須といえます。

また、社員名簿は事業所ごとに作成・管理しなければなりません。データ保管している場合は各事業所で即座に表示・印字できる状態にしておくことが重要です。各事業所で表示・印字できるような環境を整える必要はありますが、データ化すればどの場所でも参照できる点はメリットといえるでしょう。

データ化するにしても、Excelなどでは更新対応などが煩雑になりやすくなってしまいます。そのため、管理の効率化を考慮するのであれば、専用システムの導入がおすすめです。さらに、社員名簿の項目として社員番号をつけたり、用途に応じて名簿を複数作成したりすることも検討しましょう。

社員名簿の取り扱いとプライバシー保護

最後に、社員名簿の取り扱い方やプライバシー保護について解説します。

社員名簿における個人情報保護の重要性

社員名簿には氏名や住所などが記載されており、これらは個人情報に該当します。また、平成27年から全面施行された改正個人情報保護法において、社員名簿は企業規模に関わらず法律に基づき管理することが必要となりました。個人情報であるため情報を収集する際には、従業員に情報の取り扱いや使用用途を説明した上で許可を得なければなりません。

個人情報保護法に違反した場合には、罰則が科される可能性があります。それだけでなく、個人情報が漏えいしたとなれば、企業の信用にも傷がつきます。社員名簿も重要な機密情報であることを理解し、万全のセキュリティのもとで管理することが重要です。

近年ではプライバシーの保護も重要視されており、法律遵守のためだけでなく、プライバシー保護の観点からもしっかりと対応する必要があります。

アクセス制御などで安全な取り扱いを

社員名簿を安全に管理するための方法の一つとして、アクセス制御によるセキュリティ対策が挙げられます。社員名簿は個人情報を含むため、Excelやシステムで管理する場合はアクセス可能な従業員を制限するべきです。

社内の従業員が誰でもアクセス可能な状態にしていると、個人情報の保護の観点からもプライバシーの保護の観点からも好ましくありません。例えば、人事部に所属する従業員しかアクセスできないようにする、などのアクセス制御が考えられるでしょう。その他にも、Excelであればパスワードを掛けて暗号化する、という方法も有効です。

社員名簿をシステム的に管理している場合であれば、アクセス制御も容易に行なえます。社外からのアクセスを制限することはもちろんのこと、社内からのアクセスについても十分に検討する必要があります。

加えて、アクセス制限を実施する際にはログも取得し、定期的に見直すことも重要です。アクセスログを定期的に見ることで、仮に不正なアクセスがあったとしても即座に気づけ、対応できます。

まとめ - 社員名簿管理の基本を把握しましょう

社員名簿は労働基準法によって作成・保存が義務付けられた法定三帳簿の一つです。従業員の氏名・住所・生年月日など、法的に義務付けられている項目もあるため、しっかりと確認しておきましょう。また、社員名簿は個人情報であることを認識し、適切なセキュリティ対策を講じた上で運用することが重要です。

必須項目以外にも、従業員の管理を効率的に行うために項目を追加することもおすすめです。例えば、顔写真などをつけて管理すれば、従業員の氏名と顔が一致するため効率的に管理できます。

富士フイルムイメージングシステムズでは、クラウド型顔写真収集サービスを提供しています。スマートフォンやPCから顔写真を収集でき、撮影対象者を1箇所に集めることなく、いつでもどこからでも顔写真収集が可能です。

Smart Photo Collector

社員名簿や社員の顔写真を適切に管理しておくことは、社員証の作成にも役立ちます。社員名簿と併せて、社員証のICカード化も検討してみてはいかがでしょうか。

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