第44回 熱処理せずに「生ビール」が飲める幸せ…
実は、ミクロフィルターのおかげだった!
- 令和元年も、残すところあとわずかになりました。忘年会が増える季節でもありますが、カンパイの主役とも言える「生ビール」の製造に、富士フイルムの技術が活用されているのはご存じですか。その技術とは、「ミクロフィルター」。今回は、フィルターとビールの意外な関係についてご紹介しましょう。
なぜ「生ビール」は「生」なのか?
意外と知られていない、その理由とは
ご登場いただいたのは、何やら白い筒のようなものを手にした産業機材事業部のお二人。
「はい、これが『ミクロフィルター』です。主に液体状のものをろ過して微粒子・微生物を取り除くのに使うものですが、読者の皆さんになじみ深い用途では、ビール工場での利用が挙げられます」
ビール、大好きです! 出荷時にフィルターを通して、“きれいなビール”にするイメージはわかるんですが、ミクロフィルターにはどのような役割があるのでしょう?
「これは、ビールの製造工程の最後に使われるフィルターです。ビールの製造では、最後に『生きた酵母』などをろ過して除去する役割があります。酵母が残っていると、瓶や缶に詰めた後も発酵が進んでしまい、ビールの味が変わったり、賞味期限が短くなってしまったりしまうんです」
生きた酵母を取り除かないといけないんですね。
「発酵を止める処理には大きく分けて2種類あります。1つは熱処理して酵母を死滅させる方法。もう1つは、『ミクロフィルター』が担っているような、酵母をろ過して取り除く方法です。現在、日本で一般的に『生ビール』と呼ばれている商品は、『熱処理をしていない、フィルターで酵母をろ過したビール』になります」
火を通していないから“生”なんだ! 生ビールが飲めるのも、ミクロフィルターのおかげということですね。
徐々に目が細かくなる「非対称膜構造」が
ビール製造現場を支えるメリットに
では、実際にミクロフィルターを見てみましょう。
筒状になっていますね。
「筒には、このように蛇腹折りにした状態でフィルターが敷き詰められています。不織布に挟まれた、真っ白なツルツルした紙のようなものが、ミクロフィルターになります」
さわってみると、ものすごく薄くてペラペラですね。この1枚でフィルターの役目をするんですか?
「そうなんです。では、このペラペラのフィルターの断面を、ググッと拡大してみましょう」
「これがミクロフィルターの断面図です。この図では、上からビールが入ってきて、下に流れていくイメージですね。ところで、上から徐々にフィルターの目が細かくなっているのがわかりますか?」
ホントだ! でも、これがあのペラペラの中に!?
「富士フイルムではこれを、『非対称膜構造』と呼んでいます。極めて薄い膜の中にこのような微細な構造を作り上げるのは、実はとても難しいのですが、フィルムの製造などで培ってきた富士フイルムの技術が、これを可能にしています」
ところで、上から、徐々に目が細かくなっていくのはなぜですか?
「大きい微粒子から徐々にろ過していくことで、フィルターが詰まりにくくなります。つまり、フィルターの寿命を長くできるんです」
そうか! 目の細かいだけだと、すぐに詰まってしまってろ過する量が減ってしまったり、フィルターを頻繁に交換しなくてはいけなくなるわけですね。ちなみに、富士フイルムのミクロフィルターを通ったビールの銘柄は…?
「詳しくはお答えできませんが(笑)、生ビールを飲む方であればほぼ間違いなく、このフィルターを通ったビールを飲んでいると思いますよ!」
ビールだけじゃない!
エレクトロニクス分野でも活躍するミクロフィルター
生ビールを味わうために、なくてはならないミクロフィルターですが、ほかにはどんな用途で使われているのでしょう?
「液晶パネル製造や半導体製造など、エレクトロニクス分野でも活用されています。 例えば液晶パネルでは、基盤となる板ガラスの上に回路を構築する工程がありますが、その際には微細なゴミでも入ることは許されません。ミクロフィルターでろ過された『超純水』と呼ばれる水で洗いながら、液晶パネルが作られています」
ろ過したものが直接製品になるだけでなく、製造工程の“洗浄”用の水にも!
「ほかにも、ミネラルウォーターや清涼飲料水、お酒ではワインや日本酒の製造現場でも使われています」
最終的な品質を左右する重要な工程で活躍している…。ミクロフィルターって、まさに縁の下の力持ちなんですね。
ミクロフィルターの活躍は私たちの身近にあった
ミクロフィルターとビールの関係、いかがだったでしょうか? 海外ではまだ熱処理したビールが主流の地域もあり、今後そのような場所でもミクロフィルターの活躍の場が広がりそうとのこと。まだ味わったことのないビールが登場する日も、近いかもしれませんね!
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