第42回 エンジンを守り燃費向上にも貢献!
「超分子」が実現した画期的なエンジンオイル用材料
- 上のイラストを見て、「富士フイルムとスポーツカーに何の関係が?」と思った方、その気持ちわかります!『フジしか知らない世界』取材チームもびっくりの、クルマと富士フイルムの意外なカンケイ。そこには、富士フイルムが生み出した“超分子”という新しい材料がありました。
過酷なエンジンルームの中で求められる
エンジンオイルの役割とは?
今回、耳慣れない「超分子」について教えてくれるのは、富士フイルム 高機能材料開発本部の方です。
「はい。こちらが、富士フイルムが開発した『超分子』材料が配合されたエンジンオイル向け添加剤です」
「潤滑油の総合メーカーとしてお馴染みの和光ケミカル(WAKO’S)さんに、超分子の技術を採用いただき、『S-FV・S スーパーフォアビークル・シナジー』という商品として、一般のお客さまにも手にしていただけるんですよ。エンジンオイルに入れていただくと、オイルの性能を向上させることができます。」
ボトルのデザインからして、クルマが速くなりそうな匂いがプンプンしますね! ところで、まずはエンジンオイルの役割から簡単にお聞きしたいのですが…。
「エンジンオイルには、主に潤滑、清浄、密封、冷却、防錆といった役割があります」
「中でも特に重要なのが『潤滑』つまり、エンジンのシリンダーをより滑らかに動かすことです。滑らかに動くことで、エンジンの寿命を延ばす効果もありますし、燃費にもいい影響があります。
滑らかに動かすためには、オイルの粘度は低いほうが良く、現在はサラサラした低粘度オイルが主流になっています」
ドロドロじゃなくて、サラサラなんですね。
「一方、サラサラにし過ぎてしまうと、金属と金属の間にオイルが留まりにくくなってきます。エンジンルーム内部は180℃以上の高温になりますから、必要十分なオイルがないと、金属同士が焼き付いてしまうんです」
つまり、サラサラオイルで滑りを良くしながら、高温状態でもちゃんと留まってくれる必要があるわけですか。
「はい。粘度のコントロールだけでは、その両立は難しいんです。そこで、富士フイルムが開発した『超分子』が役に立っています」
まるで意識を持っているように振る舞う
『超分子』のチームワーク
「こちらが、先ほどのボトルの中身になります」
色はサラダオイルとほとんど変わりませんが、粘度は少し高めで…、ハチミツに近い感じでしょうか。
「今は常温なので硬めに感じますが、エンジン内は温度も高く、もっとサラサラな状態になるんですよ。そして、このオイルの中の、目には見えない『超分子』が、ちょっと面白い動きをしているんです」
「このように、オイルに荷重がかかり圧力が高まると、オイル内の超分子が集まって保護膜を作り、エンジン内部の焼き付きを防ぎます」
「超分子が集合すると、このように金属面に分子サイズの緻密な保護膜を形成するんです」
超分子が周りの状況によって、勝手に集まるんですか? 何だか超分子が意識を持って動いているみたいですね!
「超分子は、金属に集積し、オイルには溶け込み、分子同士は綺麗に集合する。そのような特性を持つように、うまく調整して作られています。また、原料に重金属などを使っていないため、環境に優しいというメリットもあるんですよ」
研究者のひらめきと強い探求心から生まれた
エンジオイルとのコラボレーション
お話を聞いていると、まさにエンジンオイルのためにあるような材料だと思えますが、超分子は元々エンジンオイルでの活用を想定して生まれたんですか?
「いいえ。元々まったく別の用途向けの材料として研究していたのですが、研究者が、『この特性ならエンジンオイルにいいんじゃないか』というアイディアを温めていました。でも社内ではみな半信半疑で、本格的な開発には至らず…そこで、自分のバイクに入れて個人的に実験して自ら体感する、というところから始まりました(笑)」
さすが! 研究者の探究心はすごいですね。
「とはいえ、自分たちではエンジンオイルとしての性能評価は難しかったので、WAKO’Sさんに相談させていただきました。そこで性能にご満足いただき、実際に製品に採用されることになったのです」
研究者のひらめきが、富士フイルムとエンジンオイルを繋いだんですね!
目には見えないミクロな世界を緻密にコントロール
今回ご紹介した「超分子」は、富士フイルムの有機合成化学研究所が開発しました。このような新材料が生まれる背景にあるのは、富士フイルムが写真材料の研究で長年培ってきた分子レベルの制御技術。これからも、思いもよらない分野で、富士フイルムが生んだ“小さな力持ち”が活躍するかもしれません。
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