新型コロナの変異株の種類とは?オミクロン株の感染力やワクチンの有効性について

新型コロナウイルスに対する銀イオンによる長期的な抗菌効果は確認しておりません

2019年12月に中国湖北省武漢市で確認された新型コロナウイルス(のちにSARS-CoV-2と命名)は、同年3月にはパンデミック(世界的な大流行)となりました。2021年現在は、ウイルスの遺伝子情報の一部が変化し、より感染力が高い可能性のある変異株が世界中で見つかっています。新型コロナウイルスの変異株の種類や症状、潜伏期間、予防対策などをまとめました。

情報は2021年12月1日現在のものです。

新型コロナウイルスおよび変異株とは?

重度の肺炎などを引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、SARS(サーズ)やMERS(マーズ)と同じコロナウイルスの仲間です。コロナウイルスはヒトや動物の間で広く感染症を引き起こします。

ヒトに感染するコロナウイルスは、新型コロナ流行前には6種類が知られていました。そのうち4種類は、一般的な風邪の原因となるウイルスで、ヒトに日常的に感染し、風邪の原因の10~15%(流行期は35%)を占めるといわれています。残りの2種類は、重度の肺炎の原因となるSARS(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)とMERS(中東呼吸器症候群コロナウイルス)です。

中国で見つかった新型コロナウイルスは、これら6種類には当てはまらない新しい型です。国際ウイルス分類委員会は2020年2月に「SARS-CoV-2」と命名しました。ちなみにコロナウイルスを顕微鏡でみると、表面に突起がみられます。これが王冠に似ていることから、ギリシャ語で王冠を表す「コロナ」にちなんで名づけられました。

いま、世界で猛威をふるっているのは新型コロナウイルスの変異株です。変異株とは、変異したウイルスのこと。変異とは、ウイルスが増殖するときにウイルスの遺伝情報(新型コロナウイルスの場合はRNA)の一部が書き換わることです。新型コロナウイルスは約2週間に1か所程度の速度で変異しているといわれ、遺伝子情報の一部が変化した変異株が世界中で見つかっています。そのなかで従来よりも感染力が高い、重症化しやすい可能性のある変異株、ワクチンが効きにくい可能性のある変異株が問題になっています。

新型コロナウイルスの変異株の種類と感染力

WHOでは、2021年5月31日に、変異株の呼び方を、α、β、γなどのギリシャ文字(ギリシャ語のアルファベット)で呼ぶことを発表しました。以前の「B.1.1.7」などの表記は専門家以外にはわかりづらかったためです。

WHOでは変異株のうち、最も警戒レベルが高いものを「懸念される変異株(VOC)」に、2番目に高いものを「注目すべき変異株(VOI)」、影響が不明な変異株を「監視下の変異株(VUM)」としています。日本でもWHOの暫定定義を準用し、国立感染症研究所が国内における変異株を以下のように分類しています。

【懸念すべき変異株(VOC/Variant of Concern)】

「感染力が増す」「重症化リスクが高まる」「ワクチン効果が弱まる」など、性質が変化した可能性のある変異株です。最も警戒レベルが高く、現在、世界中が警戒しているオミクロン株もこれに分類されます。

  • ・β株(ベータ株)…南アフリカで最初に検出された変異株
  • ・γ株(ガンマ株)…ブラジルで最初に検出された変異株
  • ・δ株(デルタ株)…インドで最初に検出された変異株
  • ・ο株(オミクロン株)…南アフリカなどで検出された変異株

【注目すべき変異株(VOI/ Variant of Interest)】

感染力や重症化リスク、ワクチン効果などに影響を与える可能性があると考えられている変異株です。現在、国内においてVOIに相当する変異株はありません。

【監視下の変異株(VUM/Variants Under Monitoring)】

ウイルスの特性に影響を与える可能性があるものの詳細は不明な変異株です。また、かつてVOC/VOIだった変異株は分類を外れたのち、一定期間VUMに分類して監視をおこなうことにしています。

  • ・α株(アルファ株)…イギリスで最初に検出された変異株
  • ・旧κ株(カッパ株)…インドで最初に検出された変異株
  • ・λ株(ラムダ株)…ペルーで最初に検出された変異株
  • ・μ株(ミュー株)…コロンビアで最初に検出された変異株
  • ・AY.4.2…デルタ株から派生。アメリカではデルタプラスとも呼ばれる変異株

オミクロン株とは?感染力や重症化度

オミクロン株は南アフリカが2021年11月25日に新たな変異株を発見したことを発表し、翌26日にはWHOがオミクロンと名づけ、「懸念される変異株(VOC)」に分類しました。すでに日本でも感染者が確認されています。

オミクロン株についてはわかっていないことが多く、現在、世界中で研究が進められています。

感染力や重症化度がほかの変異株に比べて強いかどうかもまだわかっていません。南アフリカでは入院率が上がり、入院患者の約1割が2歳未満だと報じられていますが、これがオミクロン株の影響によるものかは不明です。また、過去にCOVID-19に感染したことがある人の再感染リスクが高いのではないかともいわれていますが、情報は限定的です。

オミクロン株など変異株へのワクチンの効果・有効性は?

一般論としてウイルスは常に変異を起こしていくので、小さな変異でワクチンの効果が完全になくなることはないとされています。ただ、影響がまったくないとは言い切れません。

デルタ株に対するワクチンの有効性については、発症と感染の予防効果は弱まる可能性が指摘されていますが、重症化の予防効果は変わらないといわれてきました。しかし、オミクロン株に対するワクチンの効果については、すでに「従来に比べて低くなる」との見方を示しているワクチン開発会社もあります。

また、そもそもワクチンは発症や感染を100%防ぐものではありません。ワクチン接種後に感染する「ブレイクスルー感染」も確認されています。日本で初めて確認されたオミクロン株の感染者も、すでにワクチンを2回接種しており、ブレイクスルー感染でした。

新型コロナウイルスの潜伏期間と症状

新型コロナウイルスの潜伏期間は1~14日(多くは5日前後)といわれています。おもな症状は、発熱、呼吸器症状、倦怠感、頭痛、消化器症状、鼻汁、味覚異常、嗅覚異常等などです。

現在、日本国内の新型コロナウイルスは、デルタ株に全国的に置き換わったと考えられていますが、今後のオミクロン株が拡大すれば、潜伏期間や症状が変わってくるかもしれません。ただし、オミクロン株の症状に特徴的な症状があるという情報は、現時点ではありません。

新型コロナウイルスの感染経路

今後、オミクロン株の感染拡大によって、新たな感染経路が確認される可能性はありますが、現時点では新型コロナウイルスの感染経路としては「飛沫感染」「接触感染」「マイクロ飛沫感染」が考えられています。感染者のうち、一人で通常より多くの人へ感染させる人は「スーパースプレッダー」と呼ばれ、感染拡大源になることがあります。

  • 飛沫感染

    感染した人が咳やくしゃみをしたときにウイルスが飛び散り、周囲の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込み、体内に入ることで感染する。
    ※おもな感染場所 人が多い場所、近距離での会話など
  • 接触感染

    感染した人の咳やくしゃみ、またはそれらが付いた手で触れることで身の回りのものにウイルスが付着し、それを健康な人が触り、その手で目や口、鼻を触ることでウイルスが体内に入って感染する。
    ※おもな感染場所 ドアノブ、手すり、つり革、スイッチなど
  • マイクロ飛沫感染

    感染した人が大声でしゃべったり、咳やくしゃみをしたりしたときに出るウイルスを含む小さな粒子「マイクロ飛沫」(エアロゾル)が、密閉空間を浮遊し、直接飛沫を浴びていない離れた場所にいる人がそれを吸い込んで感染する。
    ※おもな感染場所 換気の悪い飲食店や会議室などの密閉空間

新型コロナウイルス感染症の予防対策

基本的な感染予防対策は、変異株でも従来株と変わりません。マスクの着用(咳エチケット)、換気、手洗い、アルコール消毒などが有効とされています。

マスクの着用(咳エチケット)

咳やくしゃみで周囲にウイルスを拡散したり、飛び散ったウイルスを吸い込んだりする「飛沫感染」や「マイクロ飛沫感染」のリスクをおさえられます。新型コロナウイルス感染症流行中は、人と話すときにはマスクをするのがエチケットです。

<マスクの種類による効果の違いは?>

飛沫感染を防ぐ効果は、不織布マスクが最も高く、布マスク、ウレタンマスクと続きます。サイズがあったマスクを選び、すきまがないように着用します。

<屋外でもマスクは必要?>

人と話すときはマスクを着用するとよいでしょう。ただ、夏は熱中症のリスクがあります。高温多湿の環境下では、人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できるときは、マスクをはずすようにしましょう。

換気をする

空気中を浮遊するマイクロ飛沫を吸い込んで感染する「マイクロ飛沫感染」の予防につながります。2か所以上の窓をあけて空気が流れるようにしたり、換気扇を使ったりして、換気をおこなうようにしましょう。エアコンを使っているときも定期的に窓をあけて換気をすることが大切です。

手洗いを徹底する

ウイルスが付着した手で口や鼻に触れて起こる「接触感染」の予防につながります。外から帰ったら流水と石けんで丁寧に手を洗い、清潔に保つようにします。手洗いができないときは、手指消毒用のアルコールも有効です。

60%以上の高濃度アルコールで身の回りを除菌・消毒する(環境消毒)

コロナウイルスは「エンベロープ」という脂質やたんぱく質からできた膜をもっています。一般的にエンベロープのあるウイルスには、アルコール消毒が有効であると考えられているので、身の回りを消毒しておくとよいでしょう。

エンベロープウイルスの代表例:新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラウイルス など

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、<アルコール消毒には60%以上の高濃度アルコールが推奨>されています。自宅やオフィスの消毒には、アルコール濃度60%以上の除菌スプレーや除菌シートを使って、手でよく触るドアノブやテーブル、リモコン、電気のスイッチなどをこまめに拭いて除菌・消毒をしておくとよいでしょう。持続効果のあるアルコール除菌スプレーを使えば、除菌効果が長持ちし、感染リスクをさらにおさえることができます。

新型コロナウイルスの変異株については、日々状況が変化しています。最新情報をチェックしながら、できる対策からおこなうことが大切です。

新型コロナウイルスの最新の発生状況や相談窓口については、公的機関の情報を参照ください。

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