- 「雨氷を纏う」
- 岡本 芳隆
ネイチャーフォト部門審査員 : 高砂 淳二
ぱっと見た瞬間とにかく美しく、昼間なのか夜なのか、色合いの微妙な感じに目が引きよせられました。よく見ると星がかなり流れているので、長時間露光で撮っていますね。したがって、明るく雪が光っているのは、月光か何かで照らされているのだと思います。見た目はもっと暗い雰囲気だったと思いますが、明るめに撮影したことで、非常に神秘的な感じが出ています。日本一、いや世界一美しい富士山が真ん中にあって、その周りを白い枝でフレーミングした最高の構図で、見ていて安心感があり、正統派の美しさを感じる写真です。まさに、自然が作者にほほ笑みかけてくれた瞬間をモノにした作品です。
自由写真部門審査員 : 管 洋志
とにかく美しい作品で、心を奪われました。凍つく大地に、堂々と鎮座して、星の流れから推測すると長時間の撮影に及ぶ気力と創作力に敬服しました。そこで表現できた木々に映える雨氷に、周囲の色温度が作用して、摩訶不思議な世界が完成しています。作者は、自然界と対面しながら、数々の思いが走馬灯のように駆けめぐり、1枚の写真にかける執念や信念めいたものが体の中に渦巻いたに違いありません。1枚の写真に込められた作者の生き様は、必ず表現の中に組み込まれると僕は信じています。そういった作家魂こそが写真の醍醐味であり、次なる創作意欲に継ってゆくのです。これからも、自分の体に潜む神性を写真表現に組み入れ、さらなる上質な作品を目指してほしい。
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